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最高裁平成23年3月22日第三小法廷判決・集民第236号225頁(マルフク⇒ディック(CFJ))

2016-09-12

主 文

1 原判決中,「219万5139円及びうち52万5611円に対する平成14年5月18日から,うち166万9528円に対する平成21年2月8日か ら各支払済みまで年5分の割合による金員」を超え る金員の支払請求に関する部分を破棄する。
2 前項の部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判 を求める申立てにつき,本件を名古屋高等裁判所に 差し戻す。
3 上告人のその余の上告を却下する。
4 前項の部分に関する上告費用は,上告人の負担とする。

理 由

上告人の上告受理申立て理由第2について
1 本件は,被上告人が,貸金業者であるA株式会社及び同社からその資産を譲り受けたB株式会社等を吸収合併しその権利義務を承継した上告人(以下,上告人及び合併に係る会社をその前後を問わず,単に「上告人」という。)との間の継続的な金銭消費貸借取引に係る各弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の制限を超えて利息として支払った部分を元 本に充当すると過払金が発生していると主張して,上告人に対し,不当利得返還請 求権に基づき,その返還等を求める事案である。

2 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 被上告人は,平成元年3月8日,Aとの間で,金銭消費貸借に係る基本契約を締結し,以後,継続的に金銭の貸付けと弁済が繰り返される取引を行った。
(2) Aは,平成14年1月29日,上告人との間で,同年2月28日午後1時を契約の実行(クロージング)の日時(以下「クロージング日」という。)として,Aの消費者ローン事業に係る貸金債権等の資産(以下「譲渡対象資産」という。)を一括して上告人に売却する旨の契約(以下「本件譲渡契約」という。)を 締結した。
本件譲渡契約は,第1.3条において,上告人は,譲渡対象資産に含まれる契約 に基づき生ずる義務のすべて(クロージング日以降に発生し,かつ,クロージング日以降に開始する期間に関するものに限る。)を承継する旨を,第1.4条(a) において,上告人は,第9.6条(b)に反しないで,譲渡対象資産に含まれる貸金債権の発生原因たる金銭消費貸借契約上のAの義務又は債務(支払利息の返還請 求権を含む。)を承継しない旨を定め,第9.6条(b)においては,「買主は,超過利息の支払の返還請求のうち,クロージング日以後初めて書面により買主に対 して,または買主および売主に対して主張されたものについては,自らの単独の絶対的な裁量により,自ら費用および経費を負担して,これを防禦,解決または履行する。買主は,かかる請求に関して売主からの補償または負担を請求しない。」と 定める。
(3) 被上告人は,平成14年3月6日から同年5月17日まで,上告人に対し,被上告人とAとの間の金銭消費貸借取引に係る借入金の弁済を行った。
(4) 被上告人は,被上告人とAとの間の金銭消費貸借取引に係る過払金返還債務(以下「本件債務」という。)は上告人に承継されると主張して,被上告人と上告人との間の別個の金銭消費貸借取引により生じた過払金と併せ,その返還等を求めている。

3 原審は,上記事実関係の下で,本件債務の承継の有無につき,次のとおり判断し,被上告人の請求を認容すべきものとした。
(1) 本件譲渡契約の第9.6条(b)は,借主とAとの間の金銭消費貸借取引に係る過払金返還債務のうち,クロージング日後に初めて書面により上告人に対して履行を請求されたものについては,上告人においてこれを重畳的に引き受ける趣旨の定めである。本件債務は,クロージング日後に初めて書面により上告人に対して履行を請求されたものであるから,上記の条項により,その責任において解決すべきものとして,上告人がこれを重畳的に引き受け,承継したといえる。
(2) 仮にそうでないとしても,本件譲渡契約は,借主とAとの間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転をその内容とするのであり,被上告人がこれを黙示的に承諾したことにより,上告人がAの上記地位を包括的に承継するという法的効果が生じたといえる。上告人において,その承継する義務の範囲を争うことは許されない。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
前記事実関係によれば,本件譲渡契約は,第1.3条及び第1.4条(a)において,上告人は本件債務を承継しない旨を明確に定めるのであって,これらの条項と対照すれば,本件譲渡契約の第9.6条(b)が,上告人において第三者弁済をする場合における求償関係を定めるものであることは明らかであり,これが置かれていることをもって,上告人が本件債務を重畳的に引き受け,これを承継したと解することはできない。
そして,貸金業者(以下「譲渡業者」という。)が貸金債権を一括して他の貸金業者(以下「譲受業者」という。)に譲渡する旨の合意をした場合において,譲渡業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんによるというべきであり,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主と譲渡業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が譲受業者に当然に移転すると解することはできないところ,上記のとおり,本件譲渡契約は,上告人が本件債務を 承継しない旨を明確に定めるのであって,これが,被上告人とAとの間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転を内容とするものと解する余地もない。

5 以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな違法がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中,原審における不服申立ての範囲である219万5139円及びうち52万5611円に対する平成14年5月18日から,うち166万9528円に対する平成21年2月8日から各支払済みまで年5分の割合による金員を超える金員の支払請求に関する部分は破棄を免れない。そこで,更に審理を尽くさせるため,上記破棄部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てにつき,本件を原審に差し戻すこととする。
なお,上告人は,不服申立ての範囲を原審におけるものより拡張し,これを219万5139円及びこれに対する平成21年6月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を超える金員の支払請求に関する部分とする旨の「上告受理申立書」を当審に提出したが,当審において不服申立ての範囲を拡張することは許されない から,拡張部分に関する上告は却下すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁 判 長 裁 判 官 大 谷 剛 彦 裁 判 官 那 須 弘 平 裁 判 官 田 原 睦 夫 裁 判 官岡部喜代子)

 

 

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 最高裁平成21年9月11日第二小法廷判決・ 集民第231号495頁

2016-09-11

主文
原判決中,上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,本件を高松高等裁判所に差し戻す。

理由
上告代理人大平昇の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

1 本件本訴は,貸金業者である上告人が,借主である被上告人Y1及び連帯保証人であるその余の被上告人らに対して貸金の返済等を求めるものであり,本件反訴は,被上告人Y1が,上告人に対し,上告人との間の金銭消費貸借契約に基づいてした弁済につき,利息制限法所定の制限利率を超えて支払った利息(以下「制限超過利息」という。)を元本に充当すると過払金が発生しているとして,不当利得返還請求権に基づき過払金の返還等を求める事案である。上告人において,期限の利益喪失特約に基づき被上告人Y1が期限の利益を喪失したと主張することが,信義則に反するか等が争われている。

2 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 上告人は,貸金業法(平成18年法律第115号による改正前の法律の題名は貸金業の規制等に関する法律)3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2) 上告人は,平成15年3月6日,被上告人Y1に対し,400万円を次の約定で貸し付けた(以下「本件貸付け①」という。)。
ア利息年29.0%(年365日の日割計算)
イ遅延損害金年29.2%(年365日の日割計算)
ウ弁済方法平成15年4月から平成20年3月まで毎月1日限り,元金6万6000円ずつ(ただし,平成20年3月のみ10万6000円)を経過利息と共に支払う。
被上告人Y は,平成15年3月62 日,上告人に対し,本件貸付け①に係る被上告人Y1の債務について連帯保証した。
(3) 上告人は,平成16年4月5日,被上告人Y1に対し,350万円を次の約定で貸し付けた(以下「本件貸付け②」という。)。
ア利息年29.0%(年365日の日割計算)
イ遅延損害金年29.2%(年365日の日割計算)
ウ弁済方法平成16年5月から平成21年4月まで毎月1日限り,元金5万8000円ずつ(ただし,平成21年4月のみ7万8000円)を経過利息と共に支払う。
被上告人Y3は,平成16年4月5日,上告人に対し,本件貸付け②に係る被上告人Y1の債務について連帯保証した。
(4) 上告人は,平成17年6月27日,被上告人Y1に対し,300万円を次の約定で貸し付けた(以下「本件貸付け③」といい,本件貸付け①,②と併せて「本件各貸付け」という。)。
ア利息年29.2%(年365日の日割計算)
イ遅延損害金年29.2%(年365日の日割計算)
ウ弁済方法平成17年8月から平成22年7月まで毎月1日限り,元金5万円ずつを経過利息と共に支払う。
被上告人Y4は,平成17年6月27日,上告人に対し,本件貸付け③に係る被上告人Y1の債務について連帯保証した。
(5) 本件各貸付けにおいては,元利金の支払を怠ったときは通知催告なくして当然に期限の利益を失い,残債務及び残元本に対する遅延損害金を即時に支払う旨の約定(以下「本件特約」という。)が付されていた。
(6) 本件各貸付けに対する被上告人Y1の弁済内容は,本件貸付け①に係る債務については原判決別表1に,本件貸付け②に係る債務については原判決別表2に,本件貸付け③に係る債務については原判決別表3にそれぞれ記載されているとおりであり,同被上告人は,本件貸付け①,②については平成16年9月1日の支払期日に,本件貸付け③については平成17年8月1日の支払期日に,全く支払をしておらず,いずれの貸付けについても,上記各支払期日の後,当初の約定で定められた支払期日までに弁済したことはほとんどなく,支払期日よりも1か月以上遅滞したこともあった。
(7) 上告人は,被上告人Y1から本件各貸付けに係る弁済金を受領する都度,領収書兼利用明細書を作成して同被上告人に交付していたところ,いずれの貸付けについても,上記(6)記載の各支払期日より後にした各弁済(以下「本件各弁済」と総称する。)に係る領収書兼利用明細書には,弁済金を遅延損害金のみ又は遅延損害金と元金に充当した旨記載されており,利息に充当した旨の記載はない。

3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり,上告人が本件各貸付けについて本件特約による期限の利益の喪失を主張することは信義則に反し許されないと判断した。そして,本件各貸付けのいずれについても被上告人Y1に期限の利益の喪失はないものとして本件各弁済につき制限超過利息を元本に充当した結果,本件各貸付けについては,原判決別表1~3のとおり,いずれも元本が完済され,過払金が発生しているとして,上告人の本訴請求をいずれも棄却し,同被上告人の反訴請求を一部認容した。
(1) 被上告人Y1は,本件貸付け①,②については,平成16年9月1日の支払期日に支払うべき元利金の支払をしなかったことにより,本件貸付け③については,平成17年8月1日の支払期日に支払うべき元利金の支払をしなかったことにより,本件特約に基づき期限の利益を喪失した。
(2) しかしながら,被上告人Y1は,本件貸付け①,②については,その期限の利益喪失後も,基本的には毎月規則的に弁済を続け,上告人もこれを受領している上,平成17年6月には新たに本件貸付け③を行い,本件貸付け③についても同被上告人はその期限の利益喪失後も弁済を継続しており,上告人が期限の利益喪失後直ちに同被上告人に対して元利金の一括弁済を求めたこともうかがわれないから,上告人は,同被上告人が弁済を遅滞しても分割弁済の継続を容認していたものというべきである。そして,本件各貸付けにおいては約定の利息の利率と遅延損害金の利率とが同率ないしこれに近似する利率と定められていることを併せ考慮すると,領収書兼利用明細書上の遅延損害金に充当する旨の表示は,利息制限法による利息の利率の制限を潜脱し,遅延損害金として高利を獲得することを目的として行われたものであるということができる。そうすると,被上告人Y1に生じた弁済の遅滞を問題とすることなく,その後も弁済の受領を反復し,新規の貸付けまでした上告人において,さかのぼって期限の利益が喪失したと主張することは,従前の態度に相反する行動であり,利息制限法を潜脱する意図のものであって,信義則に反し許されない。

4 原審の上記3(1)の判断は是認することができるが,同(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
原審は,上告人において,被上告人Y1が本件特約により本件各貸付けについて期限の利益を喪失した後も元利金の一括弁済を求めず,同被上告人からの一部弁済を受領し続けたこと(以下「本件事情①」という。),及び本件各貸付けにおいては,約定の利息の利率と約定の遅延損害金の利率とが同一ないし近似していること(以下「本件事情②」という。)から,上告人が領収書兼利用明細書に弁済金を遅延損害金のみ又は遅延損害金と元金に充当する旨記載したのは,利息制限法による利息の利率の制限を潜脱し,遅延損害金として高利を獲得することを目的としたものであると判断している。
しかし,金銭の借主が期限の利益を喪失した場合,貸主において,借主に対して元利金の一括弁済を求めるか,それとも元利金及び遅延損害金の一部弁済を受領し続けるかは,基本的に貸主が自由に決められることであるから,本件事情①が存在するからといって,それだけで上告人が被上告人Y1に対して期限の利益喪失の効果を主張しないものと思わせるような行為をしたということはできない。また,本件事情②は,上告人の対応次第では,被上告人Y1に対し,期限の利益喪失後の弁済金が,遅延損害金ではなく利息に充当されたのではないかとの誤解を生じさせる可能性があるものであることは否定できないが,上告人において,同被上告人が本件各貸付けについて期限の利益を喪失した後は,領収書兼利用明細書に弁済金を遅延損害金のみ又は遅延損害金と元金に充当する旨記載して同被上告人に交付するのは当然のことであるから,上記記載をしたこと自体については,上告人に責められる理由はない。むしろ,これによって上告人は,被上告人Y1に対して期限の利益喪失の効果を主張するものであることを明らかにしてきたというべきである。したがって,本件事情①,②だけから上告人が領収書兼利用明細書に上記記載をしたことに利息制限法を潜脱する目的があると即断することはできないものというべきである。
原審は,上告人において,被上告人Y1が本件貸付け①,②について期限の利益を喪失した後に本件貸付け③を行ったこと(以下「本件事情③」という。)も考慮し,上告人の期限の利益喪失の主張は従前の態度に相反する行動であり,利息制限法を潜脱する意図のものであって,信義則に反するとの判断をしているが,本件事情③も,上告人が自由に決められることである点では本件事情①と似た事情であり,それだけで上告人が本件貸付け①,②について期限の利益喪失の効果を主張しないものと思わせるような行為をしたということはできないから,本件事情③を考慮しても,上告人の期限の利益喪失の主張が利息制限法を潜脱する意図のものであるということはできないし,従前の態度に相反する行動となるということもできない。
他方,前記事実関係によれば,被上告人Y1は,本件各貸付けについて期限の利益を喪失した後,当初の約定で定められた支払期日までに弁済したことはほとんどなく,1か月以上遅滞したこともあったというのであるから,客観的な本件各弁済の態様は,同被上告人が期限の利益を喪失していないものと誤信して本件各弁済をしたことをうかがわせるものとはいえない。
そうすると,原審の掲げる本件事情①ないし③のみによっては,上告人において,被上告人Y1が本件特約により期限の利益を喪失したと主張することが,信義則に反し許されないということはできないというべきである。

5 以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中,上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官竹内行夫裁判官今井功裁判官中川了滋裁判官古田佑紀)

 

 

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最高裁平成23年7月14日第一小法廷判決・集民第237号263頁

2016-09-10

主 文
原判決を破棄する。
本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理 由
上告代理人魚住直人,同塚原正典の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

1 本件は,被上告人が,貸金業者である上告人に対し,上告人との間の継続的な金銭消費貸借取引に係る各弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の制限を超えて利息として支払われた部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金が発生していると主張して,不当利得返還請求権に基づき,その返還等を求める事案である。

2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 被上告人は,上告人との間で,次の①ないし④の各期間における取引の開始時にそれぞれ金銭消費貸借に係る基本契約を締結して,①昭和56年4月10日から昭和58年12月24日まで,②昭和60年6月25日から昭和61年11月27日まで,③平成元年1月23日から平成10年4月6日まで,④平成12年8月7日から平成21年3月9日まで,第1審判決別紙計算書(1)記載の「借入金額」欄及び「弁済額」欄記載のとおり,継続的に金銭の貸付けと弁済が繰り返される金銭消費貸借取引を行った(以下,上記各期間の取引に係る基本契約を順に「基本契約1」などという。)。
(2) 基本契約1ないし基本契約3には,いずれも,当初の契約期間の経過後も,当事者からの申出がない限り当該契約を2年間継続し,その後も同様とする旨の定め(以下「本件自動継続条項」という。)がある。

3 原審は,上記事実関係の下において,基本契約1ないし3には本件自動継続条項が置かれていることから,基本契約1に基づく最終の弁済から基本契約2に基づく最初の貸付け,基本契約2に基づく最終の弁済から基本契約3に基づく最初の貸付け及び基本契約3に基づく最終の弁済から基本契約4に基づく最初の貸付けまでの各期間のいずれにおいても,2年ごとの契約期間の自動継続がされていたとして,上記各期間を考慮することなく,基本契約1ないし4に基づく取引は,事実上1個の連続した貸付取引であり,基本契約1ないし3に基づく取引により発生した各過払金をそれぞれ基本契約2ないし4に基づく取引に係る借入金債務に充当する
旨の合意(以下「本件過払金充当合意」という。)が存在すると判断して,原告の請求を認容した。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約(以下「第1の基本契約」という。)が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,過払金が発生することとなった弁済がされた時点においては両者の間に他の債務が存在せず,その後に,両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基本契約(以下「第2の基本契約」という。)が締結され,第2の基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は,第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である(最高裁平成18年(受)第2268号同20年1月18日第二小法廷判決・民集62巻1号28頁)。そして,第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,第1の基本契約についての契約書の返還の有無,借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無,第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況,第2の基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解するのが相当である(前記第二小法廷判決)。
しかるに,原審は,前記事実関係によれば,基本契約1に基づく最終の弁済から基本契約2に基づく最初の貸付け,基本契約2に基づく最終の弁済から基本契約3に基づく最初の貸付け及び基本契約3に基づく最終の弁済から基本契約4に基づく最初の貸付けまで,それぞれ約1年6か月,約2年2か月及び約2年4か月の期間があるにもかかわらず,基本契約1ないし3に本件自動継続条項が置かれていることから,これらの期間を考慮することなく,基本契約1ないし4に基づく取引は事実上1個の連続した取引であり,本件過払金充当合意が存在するとしているのであるから,この原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,前記特段の事情の有無等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官金築誠志の補足意見がある。

裁判官金築誠志の補足意見は,次のとおりである。
法廷意見が引用するように,最高裁平成20年1月18日第二小法廷判決は,中断期間を置いて複数の基本契約に基づく貸付取引が存在する場合に,事実上一個の連続した取引であると評価できるか否かは,取引の中断期間等のいわゆる6要素を考慮して決定されるべきものとしている。自動継続条項が存在することを主要な理由として取引の一連一体性を認める原審の見解によれば,中断期間の長短などは問題にならなくなるのであるから,原審の見解が上記判決の趣旨に沿わないことは明らかであろう。貸金業者の締結する金銭消費貸借基本契約に,本件と同様の自動継続条項が盛り込まれている場合が多いことは,当裁判所に顕著な事実であるところ,上記判決は,法律的には別個の基本契約が存在する場合に,これらに基づく実際の取引が中断していた期間の長短,その間における貸主と借主との接触の状況,新たな基本契約が締結されるに至る経緯といった,取引の事実上の側面に重点を置いた6要素を総合的に考慮して一個の連続した取引と評価し,充当合意を認定すべきものとするものであって,自動継続条項に基づく法律的・形式的な契約の継続は,考慮に加えるべき重要な要素として位置付けていないと解される。新たな取引とみるかどうかについて,このように事実上の側面に重点を置くことは,消費者等の取引当事者の通常の見方にも合致するように思われる。また,本判決の考え方は,過払金返還請求権の消滅時効の起算点を,特段の事情がない限り取引終了時とし,自動継続条項による基本契約の効力継続の点を問題にしていない,最高裁平成20年(受)第468号同21年1月22日第一小法廷判決・民集63巻1号247頁とも,整合的であると考えられる。
(裁判長裁判官 金築誠志 裁判官 宮川光治 裁判官 櫻井龍子 裁判官横田尤孝 裁判官 白木 勇)

 

 

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最高裁平成19年2月13日第三小法廷 判決・民集第61巻1号182頁

2016-09-09

主文

1 原判決中,被上告人に関する部分のうち,本訴請求に関する部分並びに反訴請求に関する部分のうち100万円及びこれに対する平成16年12月1日から支払済みまで年30%の割合による金員の支払を求める部分を破棄する。
2 前項の部分につき,本件を広島高等裁判所に差し戻す。
3 上告人のその余の上告を棄却する。
4 前項に関する上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人馬場正裕の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

1 本件本訴請求事件は,被上告人が上告人に対し,平成5年3月及び平成10年8月の2回の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額(以下,単に「利息の制限額」という。)を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると原判決別紙利息制限法計算書3のとおり過払金が発生しているとして,不当利得返還請求権に基づき,過払金416万9976円及びこれに対する年6分の割合(商事法定利率)による民法704条前段所定の利息の支払を求める事案であり,本件反訴請求事件は,上告人が被上告人に対し,上記各貸付けに係る債務の各弁済には,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)43条1項の規定が適用されるから,利息の制限額を超える部分の支払も有効な利息の債務の弁済とみなされるとして,上記各貸付けの残元本合計393万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。

2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 上告人は,貸金業法3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2)ア上告人は,平成5年3月26日,被上告人に対し,300万円を次の約定で貸し付けた(以下「本件第1貸付け」という。)。
(ア) 利息年40.004%
(イ) 支払方法最終支払日を平成5年5月末日とし,同日限り元本及び利息を持参して支払う。
イ上告人と被上告人は,平成5年5月末日ころ,本件第1貸付けについて,元本の弁済期を期限の定めのないものとする旨合意した。
ウ被上告人は,平成5年4月26日から平成15年12月19日までの間,上告人に対し,本件第1貸付けに係る債務の弁済として,原判決別紙利息制限法計算書1の「年月日」欄記載の各年月日に,「弁済額」欄記載の各金銭を支払った。
エ上記ウの各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると,平成8年10月31日以後,過払金が発生している。
(3)ア上告人は,平成10年8月28日,被上告人に対し,100万円を次の約定で貸し付けた(以下「本件第2貸付け」といい,これと本件第1貸付けとを併せて「本件各貸付け」という。)。
(ア) 利息年40.004%
(イ) 支払方法最終支払日を平成10年9月27日とし,同日限り元本及び利息を持参して支払う。
イ上告人と被上告人は,平成10年9月27日ころ,本件第2貸付けについて,元本の弁済期を期限の定めのないものとする旨合意した。
ウ被上告人は,上告人に対し,本件第2貸付けに係る債務の弁済として,原判決別紙利息制限法計算書2の「年月日」欄記載の各年月日に,「弁済額」欄記載の各金銭を支払った。
(4) 上告人と被上告人との間で,継続的に貸付けが繰り返されることを予定した基本契約(以下,単に「基本契約」という。)は締結されていない。

3 原審は,前記事実関係の下において,次のとおり判断して,被上告人の本訴請求を全部認容すべきものとし,上告人の反訴請求を全部棄却すべきものとした。
(1) 本件各貸付けに係る債務の各弁済に当たって貸金業法18条1項所定の要件を具備した書面が被上告人に交付されていないので,上記各弁済については,同法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。
(2) 同一の貸主から複数の貸付けを受ける借主としては,基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される場合でなくても,過払金を考慮して全体として借入総額が減少することを望み,複数の権利関係が発生するような事態が生ずることは望まないのが通常の合理的意思であると考えられ,過払金が発生した後に別口の借入金が発生したときであっても,その別口の借入金の弁済に過払金を充当する意思を有していると推認するのが相当であるから,上告人と被上告人との間で基本契約が締結されておらず,本件第1貸付けについて過払金が発生した平成8年10月31日の後に,本件第2貸付けに係る債務が発生したものであるとしても,本件第1貸付けについての過払金は,本件第2貸付けに係る債務に当然に充当されると解される。
(3) 本件各貸付けに係る債務についての過払金は,上告人の不当利得となるが,上告人は,上記過払金が発生した時点から民法704条の悪意の受益者というべきである。
(4) 上記過払金の返還債務は,実質的に,上告人の商行為によって生じた債務というべきであり,また,上告人が,過払金を営業のために使用し,収益を上げているのは明らかであるから,上告人が上記債務に付すべき民法704条前段所定の利息の利率は,商事法定利率の年6分と解すべきである。

4 しかしながら,原審の上記3(2)及び(4)の判断は是認することができない。
その理由は,次のとおりである。
(1) 原審の上記3(2)の判断について
貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し(以下,この過払金を「第1貸付け過払金」という。),その後,同一の貸主と借主との間に第2の貸付けに係る債務が発生したときには,その貸主と借主との間で,基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており,第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか,その貸主と借主との間に第1貸付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情のない限り,第1貸付け過払金は,第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず,第2の貸付けに係る債務には充当されないと解するのが相当である。なぜなら,そのような特段の事情のない限り,第2の貸付けの前に,借主が,第1貸付け過払金を充当すべき債務として第2の貸付けに係る債務を指定するということは通常は考えられないし,第2の貸付けの以後であっても,第1貸付け過払金の存在を知った借主は,不当利得としてその返還を求めたり,第1貸付け過払金の返還請求権と第2の貸付けに係る債権とを相殺する可能性があるのであり,当然に借主が第1貸付け過払金を充当すべき債務として第2の貸付けに係る債務を指定したものと推認することはできないからである。
これを本件についてみるに,前記事実関係によれば,上告人と被上告人との間で基本契約は締結されておらず,本件第1貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生した平成8年10月31日の後に,本件第2貸付けに係る債務が発生したというのであるから,上記特段の事情のない限り,本件第1貸付けに係る債務の各弁済金のうち過払金となる部分は,本件第2貸付けに係る債務に充当されないというべきである。
そうすると,本件において上記特段の事情の有無について判断することなく,上記過払金となる部分が本件第2貸付けに係る債務に当然に充当されるとした原審の上記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
(2) 原審の上記3(4)の判断について
商行為である貸付けに係る債務の弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において,悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は,民法所定の年5分と解するのが相当である。なぜなら,商法514条の適用又は類推適用されるべき債権は,商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものでなければならないところ,上記過払金についての不当利得返還請求権は,高利を制限して借主を保護する目的で設けられた利息制限法の規定によって発生する債権であって,営利性を考慮すべき債権ではないので,商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものと解することはできないからである。これと異なる原審の上記3(4)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

5 以上によれば,論旨は理由があり,原判決中,被上告人に関する部分のうち,本訴請求に関する部分並びに反訴請求に関する部分のうち100万円及びこれに対する平成16年12月1日から支払済みまで年30%の割合による金員の支払を求める部分(本件第2貸付けについての請求部分)は破棄を免れない。そこで,前記特段の事情の有無等につき更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
なお,その余の部分に関する上告については,上告受理申立ての理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官那須弘平裁判官上田豊三裁判官藤田宙靖裁判官
堀籠幸男裁判官田原睦夫)

 

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最高裁平成23年7月7日第一小法廷判決・集民第237号139頁(マルフク⇒ディック(CFJ))

2016-09-07

主 文
1 原判決中,「106万0061円及びこれに対する平成21年8月18日から支払済みまで年5分の割合による金員」を超える金員の支払請求に関する部分を破棄する。
2 前項の部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てにつき,本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理 由
上告人の上告受理申立て理由について

1 本件は,被上告人が,貸金業者である株式会社A及び同社からその資産を譲り受けた上告人との間の継続的な金銭消費貸借取引に係る各弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の制限を超えて利息として支払った部分を元本に充当すると過払金が発生していると主張して,上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,その返還等を求める事案である。

2 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 被上告人は,平成5年11月12日,Aとの間で,金銭消費貸借に係る基本契約を締結し,以後,継続的に金銭の貸付けと弁済が繰り返される取引を行った。
(2) Aは,平成14年3月29日,上告人との間で,同年5月2日を契約の実行日(以下「クロージング日」という。)として,Aの消費者ローン事業に係る貸金債権等の資産(以下「譲渡対象資産」という。)を一括して上告人に売却する旨の契約(以下「本件譲渡契約」という。)を締結した。
(3) 本件譲渡契約は,第1.3条において,上告人は,譲渡対象資産に含まれる契約に基づき生ずる義務のすべて(クロージング日後に発生し,かつ,クロージング日後に開始する期間に関するものに限る。)を承継する旨を定め,第1.4条(a)において,上告人の承継しない義務又は債務の例として,譲渡対象資産に含まれる貸金債権の発生原因たる金銭消費貸借契約上のAの義務又は債務(支払利息の返還請求権を含む。)を挙げる。
(4) 被上告人は,上告人との間で,平成14年5月8日,新たに金銭消費貸借に係る基本契約を締結して,同日から平成20年12月19日まで,継続的に金銭の貸付けと弁済が繰り返される取引を行った。
(5) 被上告人は,被上告人とAとの間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位は上告人に承継され,これに伴い,当該取引に係る過払金返還債務(以下「本件債務」という。)も上告人に承継されると主張する。

3 原審は,上記事実関係の下で,本件債務の承継の有無につき,次のとおり判
断し,被上告人の請求を認容すべきものとした。
(1) 本件譲渡契約は営業譲渡契約であるから,特段の事情がない限り,Aの営業に関する債権のみならず,金銭消費貸借取引に係る契約上の地位も上告人に移転したというべきである。
(2) 上告人は,本件譲渡契約には上告人において本件債務を承継しない旨の定めがあると主張する。しかし,金銭消費貸借取引に係る基本契約に基づく貸金債権と過払金返還債務とは表裏一体の関係にあり密接に関連するところ,過払金返還債務のみを承継の対象から除外すると,借主は取引期間全体につき弁済金の充当計算をして過払金の返還を請求する利益を喪失するのであるから,借主がこのことを承知の上で金銭消費貸借取引に係る契約上の地位の移転を承諾したなど特段の事情がない限り,過払金返還債務も承継の対象になるというべきである。本件において,上記特段の事情は認められず,本件債務は上告人に承継され,上記のような定めがあることは,本件債務の承継を否定する根拠にならない。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
貸金業者(以下「譲渡業者」という。)が貸金債権を一括して他の貸金業者(以下「譲受業者」という。)に譲渡する旨の合意をした場合において,譲渡業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんによるというべきであり,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主と譲渡業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が譲受業者に当然に移転する,あるいは,譲受業者が上記金銭消費貸借取引に係る過払金返還債務を上記譲渡の対象に含まれる貸金債権と一体のものとして当然に承継すると解することはできない(最高裁平成22年(受)第1238号,同年(オ)第1187号同23年3月22日第三小法廷判決・裁判集民事236号登載予定参照)。そして,借主と譲渡業者との間の金銭消費貸借取引に係る基本契約が,過払金が発生した場合にはこれをその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものであったとしても,借主は当然に貸金債権の一括譲渡の前後を通算し弁済金の充当計算をして過払金の返還を請求する利益を有するものではなく,このような利益を喪失することを根拠に,譲受業者が上記取引に係る過払金返還債務を承継すると解することもできない。
前記事実関係によれば,本件譲渡契約において,上告人は本件債務を承継しない旨が明確に合意されているのであって,上告人は本件債務を承継せず,その支払義務を負わないというべきである。

5 以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな違法がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中,不服申立ての範囲である106万0061円及びこれに対する平成21年8月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を超える金員の支払請求に関する部分は破棄を免れない。そこで,更に審理を尽くさせるため,上記部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てにつき,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 櫻井龍子 裁判官 宮川光治 裁判官 金築誠志 裁判官横田尤孝 裁判官 白木 勇)

 

 

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最高裁平成18年1月19日第一小法廷判決・集民第219号31頁(対シティズ)

2016-09-05

主     文

原判決を破棄する。
本件を広島高等裁判所に差し戻す。

理     由

上告代理人板根富規,同青木貴央の上告受理申立て理由第2の3について

1 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

(1) 被上告人は,貸金業の規制等に関する法律(以下「法」という。)3条所定の登録を受けた貸金業者である。

(2) 被上告人は,平成7年5月23日,Dに対し,300万円を,次の約定で貸し付け(以下「旧貸付け」という。),上告人は,同日,被上告人に対し,Dの旧貸付けに係る債務について連帯保証をした。
ア 利息 年29.80%(年365日の日割計算)
イ 遅延損害金 年39.80%(年365日の日割計算)
ウ 返済方法 平成7年6月から平成12年5月まで毎月27日に60回にわたって元金5万円ずつを経過利息と共に支払う。
エ 特約 Dは,元金又は利息の支払を遅滞したときには,当然に期限の利益を失い,被上告人に対して直ちに元利金を一時に支払う(以下「本件期限の利益喪失特約」という。)。

(3) 被上告人は,旧貸付けに係る契約を締結した際に,Dに対し,平成7年5月23日付け金銭消費貸借契約証書,同日付け貸付契約説明書及び償還表を交付した。
上記金銭消費貸借契約証書及び貸付契約説明書(以下「旧契約書等」という。)には,利息の利率を利息制限法1条1項所定の制限利率を超える年29.80%とする約定が記載された後に,本件期限の利益喪失特約につき,「元金又は利息の支払を遅滞したとき(中略)は催告の手続きを要せずして期限の利益を失いただちに元利金を一時に支払います。」と記載され,期限後に支払うべき遅延損害金の利率を同法4条1項所定の制限利率を超える年39.80%とする約定が記載されていた。

(4) Dは,被上告人に対し,旧貸付けに係る債務の弁済として,第1審判決別紙原告側元利金計算書(2)の「入金日」欄記載の各年月日に「入金額」欄記載の各金額を弁済し,被上告人は,Dに対し,弁済の都度,「領収書兼利用明細書」と題する書面を交付した。

(5) 被上告人は,平成10年2月20日,Dに対し,340万円を,返済方法を平成10年3月から平成15年2月まで毎月27日に60回にわたって元金5万6000円ずつ(最終回は9万6000円)を経過利息と共に支払うものとするほかは,本件期限の利益喪失特約を含めて旧貸付けと同じ約定で貸し付け(以下「本件貸付け」という。),上告人は,同日,被上告人に対し,Dの本件貸付けに係る債務について連帯保証をした。

(6) 被上告人は,本件貸付けに係る契約を締結した際に,Dに対し,平成10年2月20日付け金銭消費貸借契約証書,同日付け貸付契約説明書及び償還表を交付した。
上記金銭消費貸借契約証書及び貸付契約説明書(以下「本件契約書等」という。)には,旧契約書等に記載された前記(3)の約定と同旨の約定が記載されていた。

(7) Dは,平成10年2月20日,被上告人から交付を受けた本件貸付金340万円の中から,被上告人に対し,前記(4)の各弁済のうち利息制限法1条1項所定の制限額(以下,単に「利息の制限額」という。)を超えて利息として支払った部分につき法43条1項の規定の適用があることを前提に計算された旧貸付けに係る残債務の弁済として,合計141万2640円を支払った。被上告人は,この支-
払によって,旧貸付けに係る債務が完済されたものと取り扱っている。

(8) Dは,被上告人に対し,本件貸付けに係る債務の弁済として,第1審判決別紙原告側元利金計算書(1)の「入金日」欄記載の各年月日に「入金額」欄記載の各金額を弁済し(以下,これらの弁済と前記(4),(7)記載の各弁済とを併せて「本件各弁済」と総称する。),被上告人は,Dに対し,弁済の都度,「領収書兼利用明細書」と題する書面を交付した。

(9) Dは,平成10年9月28日に支払うべき元利金の支払を怠り,期限の利益を喪失した。

2 本件は,被上告人が,本件各弁済のうち利息の制限額を超えて利息として支払った部分について,法43条1項の規定が適用されるから,有効な利息の債務の弁済とみなされると主張して,上告人に対し,連帯保証債務履行請求権に基づき,本件貸付けの残元本233万5954円及び遅延損害金の支払を求める事案である。

3 原審は,次のとおり判断し,本件各弁済のうち利息の制限額を超えて利息として支払った部分については法43条1項の規定が適用されるとして,被上告人の請求を全部認容すべきものとした。
期限の利益喪失特約は,債務者に対して約定どおりの債務の履行を促す効果を有するものであるが,同特約が公序良俗に反するなど著しく不当なものでない限り,同特約の存在とその適用による不利益の警告は,債務者に対する違法不当な圧力とはいえず,弁済の任意性に影響を及ぼさないというべきである。本件期限の利益喪失特約は,公序良俗に反するなど著しく不当なものには至らないから,その存在を理由に本件各弁済の任意性を否定することはできない。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1) 法43条1項は,貸金業者が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約に基づき,債務者が利息として支払った金銭の額が利息の制限額を超え,利息制限法上,その超過部分(以下「制限超過部分」という。)につき,その契約が無効とされる場合において,貸金業者が,貸金業に係る業務規制として定められた法17条1項及び18条1項所定の各要件を具備した各書面を交付する義務を遵守しているときには,その支払が任意に行われた場合に限って,例外的に利息制限法1条1項の規定にかかわらず,制限超過部分の支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めたものであるこのような法43条1項の規定の趣旨にかんがみると,同項の適用に当たっては,制限超過部分の支払の任意性の要件は,明確に認められることが必要である。法21条1項に規定された行為は,貸金業者として最低限度行ってはならない態様の取立て行為を罰則により禁止したものであって,貸金業者が同項に違反していないからといって,それだけで直ちに債務者がした制限超過部分の支払の任意性が認められるものではない
そうすると,法43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」とは,債務者が利息の契約に基づく利息の支払に充当されることを認識した上,自己の自由な意思によってこれを支払ったことをいい,債務者において,その支払った金銭の額が利息の制限額を超えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しないと解するのが相当である(最高裁昭和62年(オ)第1531号平成2年1月22日第二小法廷判決・民集44巻1号332頁参照)が,債務者が,事実上にせよ強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をした場合には,制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものということはできず,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。そして,債務者が制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったか否かは,金銭消費貸借契約証書や貸付契約説明書の文言,契約締結及び督促の際の貸金業者の債務者に対する説明内容などの具体的事情に基づき,総合的に判断されるべきである。

(2) ところで,本件期限の利益喪失特約がその文言どおりの効力を有するとすると,Dは,支払期日に制限超過部分を含む約定利息の支払を怠った場合には,元本についての期限の利益を当然に喪失し,残元本全額及び経過利息を直ちに一括して支払う義務を負うことになる上,残元本全額に対して年39.80%の割合による遅延損害金を支払うべき義務も負うことになる。しかし,このような結果は,Dに対し,期限の利益を喪失する等の不利益を避けるため,本来は利息制限法1条1項によって支払義務を負わない制限超過部分の支払を強制することとなるから,同項の趣旨に反し容認することができず,【要旨1】本件期限の利益喪失特約のうち,Dが支払期日に制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は,同項の趣旨に反して無効であり,Dは,支払期日に約定の元本及び利息の制限額を支払いさえすれば,制限超過部分の支払を怠ったとしても,期限の利益を喪失することはなく,支払期日に約定の元本又は利息の制限額の支払を怠った場合に限り,期限の利益を喪失するものと解するのが相当である。
そして,本件期限の利益喪失特約は,法律上は,上記のように一部無効であって,制限超過部分の支払を怠ったとしても期限の利益を喪失することはないけれども,旧契約書等及び本件契約書等における本件期限の利益喪失特約の文言は,通常,債務者に対し,支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り,期限の利益を喪失し,残元本全額を直ちに一括して支払い,これに対する年39.80%の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え,その結果,このような不利益を回避するために,制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。
したがって,【要旨2】本件期限の利益喪失特約の下で,債務者が,利息として,利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には,上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできない。
そうすると,本件において上記特段の事情の存否につき審理判断することなく,Dが任意に制限超過部分を支払ったとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

5 以上によれば,論旨は理由があり,上告理由について判断するまでもなく,原判決は破棄を免れない。そこで,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 横尾和子 裁判官 泉 徳治 裁判官 島
田仁郎 裁判官 才口千晴)

 

 

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最高裁平成21年9月4日第二小法廷判決・集民第231号477頁

2016-09-04

主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人前田陽司,同黒澤幸恵,同菊川秀明の上告受理申立て理由について

1 金銭消費貸借の借主が利息制限法1条1項所定の制限を超えて利息の支払を継続し,その制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生した場合において,貸主が悪意の受益者であるときは,貸主は,民法704条前段の規定に基づき,過払金発生の時から同条前段所定の利息を支払わなければならない(大審院昭和2年(オ)第195号同年12月26日判決・法律新聞2806号15頁参照)。このことは,金銭消費貸借が,貸主と借主との間で継続的に金銭の借入れとその弁済が繰り返される旨の基本契約に基づくものであって,当該基本契約が過払金が発生した当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものであった場合でも,異なるところはないと解するのが相当である

2 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用 することができない。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官古田佑紀 裁判官今井功 裁判官中川了滋 裁判官竹内行夫)

 

 

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最高裁平成16年2月20日 第二小法廷判決・ 民集第58巻2号475頁(対SFCG)

2016-09-02

主  文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理    由

上告代理人及川智志外102名の上告受理申立て理由について

1 原審が確定した事実関係は,次のとおりである。

(1)上告人は,貸金業の規制等に関する法律(以下「法」という。)3条所定の登録を受けて貸金業を営む被上告人との間で,平成7年5月19日,上告人が被上告人から手形割引,金銭消費貸借等の方法により継続的に信用供与を受けるための基本的事項について合意した(以下,この合意を「本件基本契約」という。)。

(2)上告人は,被上告人に対し,本件基本契約の合意内容を記載した「手形割引・金銭消費貸借契約等継続取引に関する承諾書並びに限度付根保証承諾書」を差し入れ,その後,被上告人からの借入金の増額に伴い,5回にわたり,上記書面とほぼ同一内容の書面を作成し,提出した。被上告人は,これらの書面の提出を受ける都度,上告人に対し,その写し(以下「本件各承諾書写し」という。)を交付した。

(2) 本件基本契約に基づき,被上告人は,上告人に対し,それぞれ,平成7年5月19日から同11年8月13日にかけての原判決別紙取引1から30までの計算表の「契約日」欄記載の各年月日に,「貸付金額」欄記載の各金銭を貸し付けたが,元本の支払方法は一括払,弁済期日は「弁済期日」欄記載の日,利率は日歩8銭とし,同表の各番号1の「支払金額」欄記載の各金銭を「利息始期」欄記載の日から「利息終期」欄記載の日までの利息及び手数料として天引きした。その後,被上告人と上告人は,平成12年2月4日,原判決別紙取引1,3及び14の計算表の各貸付けを同取引31の計算表の貸付けとし,同取引21,23及び27の計算表の各貸付けを同取引32の計算表の貸付けとする準消費貸借契約を締結した(以下,これらの金銭消費貸借及び準消費貸借取引に係る原判決別紙取引1から32までの計算表の各貸付けを,それぞれ「取引1の貸付け」,「取引2の貸付け」などといい,これらの貸付けを「本件各貸付け」と総称する。)。
被上告人は,上告人に対し,① 取引1から20まで及び取引22の各貸付けに際し,上告人が被上告人に差し入れた各「借用証書」とほぼ同一内容が記載された「お客様控え」と題する各借用証書控え(以下「本件各借用証書控え」という。)を,② 取引21及び取引23から29までの各貸付けに際し,上告人が被上告人に差し入れた各「債務弁済契約証書」の写し(以下「本件各債務弁済契約証書写し」という。)を,③ 取引30の貸付けに際し,上告人が被上告人に差し入れた「金銭消費貸借契約証書」の写し(以下「本件金銭消費貸借契約証書写し」という。)を,それぞれ交付した。
なお,本件各貸付けのうちの幾つかの貸付けについては,当初の元本の返済期日が1か月ずつその都度延長されることが繰り返された。

(3)被上告人は,上告人に対し,本件各貸付けの元本又は利息の返済期日である毎月5日の約10日前である前月の25日ころに,返済期日から先1か月分についての本件各貸付けに係る利息及び費用(以下,利息及び費用を合わせて「利息等」という。)の銀行振込みによる支払を求める旨の各書面(被上告人の銀行口座への振込用紙と一体となったもの。以下「本件各取引明細書」という。)を送付した。

(4)なお,この利息等の金額は,利息制限法1条1項所定の利息の制限額(以下,単に「利息の制限額」という。)を超えるものであった。
上告人は,被上告人に対し,それぞれ,本件各貸付けの弁済として,原判決別紙取引1から32までの計算表の番号2以下の「支払日」欄記載の各年月日に,「支払金額」欄記載の各金銭を支払った(以下,これらの各支払を「本件各弁済」と総称する。)。なお,上告人による本件各弁済の日から20日余り経過した後に,被上告人から上告人に送付された本件各取引明細書には,前回の支払についての充当関係が記載されているものがあった。

2 本件は,上告人が,被上告人に対し,本件各貸付けにつき支払われた利息等のうち利息の制限額を超える部分を元本に充当すると過払金が生じているとして,不当利得返還請求権に基づき,過払金の返還を求める事案である。

3 原審は,次のとおり判断し,本件各弁済による被上告人の不当利得返還債務は存在しないとして,上告人の請求を棄却すべきものとした。

(1) 利息制限法2条は,利息の天引きがされた場合の同法1条1項の規定の適用の仕方,すなわち,受領額を元本として計算した場合の約定利率が同項の制限に服することを定めているのであるから,法43条1項が一定の要件の下に利息制限法1条1項の規定の適用を排除しているのは,同法2条の規定の適用をも排除する趣旨と解するのが相当である。したがって,利息の天引きについても,債務者が利息の契約に基づく利息の支払に充当されることを認識した上でこれを支払えば,法43条1項の規定の適用対象となる任意の弁済に当たる。

(2) 被上告人は,上告人に対し,本件各承諾書写しを交付しているほか,取引1から30までの各貸付けに係る金銭消費貸借契約締結の際には,本件各借用証書控え,本件各債務弁済契約証書写し又は本件金銭消費貸借契約証書写しを交付している。本件各借用証書控えには,契約日,貸付金額,弁済期,返済方法,利率(日歩及び実質年率)及び損害金の約定のほか,契約番号,貸付金利息及び諸費用の額,受領金額等が記載されており,また,本件各債務弁済契約証書写し及び本件金銭消費貸借契約証書写しには,契約日,貸付金額,弁済期,返済方法,利息の約定(先払の旨と日歩,実質年率),損害金の約定のほか,事務手数料の額等が記載されており,これらの書面の交付により,本件各貸付けについては法17条1項の要件を具備した書面の交付がされたものといえる。

(3) 上告人による本件各弁済の日から20日余り経過した後に,被上告人から上告人に送付された本件各取引明細書には,前回の支払についての充当関係が記載されているものがある。被上告人がその支払を確認するためにはある程度の時間を要すると考えられるほか,予定されている次回の支払期限の前には別途,本件各取引明細書が送付されており,債務者である上告人が次回の支払をするに当たって,具体的に既払金の充当関係やこの支払後の残元本の額等を知ることができたものと認められるから,上記のように支払から20日余り経過した後にその支払についての充当関係が記載された本件各取引明細書が送付された各支払については,法18条1項所定の要件を具備した書面の交付がされたものといえる。

4 しかしながら,原審の上記判断は,いずれも是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1) 利息制限法2条は,貸主が利息を天引きした場合には,その利息が制限利率以下の利率によるものであっても,現実の受領額を元本として同法1条1項所定の利率で計算した金額を超える場合には,その超過部分を元本の支払に充てたものとみなす旨を定めている。そして,法43条1項の規定が利息制限法1条1項についての特則規定であることは,その文言上から明らかであるけれども,上記の同法2条の規定の趣旨からみて,法43条1項の規定は利息制限法2条の特則規定ではないと解するのが相当である。
したがって,【要旨1】貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づき利息の天引きがされた場合における天引利息については,法43条1項の規定の適用はないと解すべきである。
これと異なる原審の前記3(1)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

(2) 法43条1項は,貸金業者が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約に基づき,債務者が利息として任意に支払った金銭の額が利息の制限額を超え,利息制限法上,その超過部分につき,その契約が無効とされる場合において,貸金業者が,貸金業に係る業務規制として定められた法17条1項及び18条1項所定の各要件を具備した各書面を交付する義務を遵守したときには,利息制限法1条1項の規定にかかわらず,その支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めている。
貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として,貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨,目的(法1条)と,上記業務規制に違反した場合の罰則(平成15年法律第136号による改正前の法49条3号)が設けられていること等にかんがみると,法43条1項の規定の適用要件については,これを厳格に解釈すべきものである。
法43条1項の規定の適用要件として,法17条1項所定の事項を記載した書面(以下「17条書面」という。)をその相手方に交付しなければならないものとされているが,【要旨2】17条書面には,法17条1項所定の事項のすべてが記載されていることを要するものであり,その一部が記載されていないときは,法43条1項適用の要件を欠くというべきであって,有効な利息の債務の弁済とみなすことはできない。
上告人は,原審において,平成7年5月19日に被上告人との間で本件基本契約を締結した際に,被上告人に対し,根抵当権設定に必要な書類を提出した旨の主張をしており,仮に,この主張事実が認められる場合には,その担保の内容及び提出を受けた書面の内容を17条書面に記載しなければならず(平成12年法律第112号による改正前の法17条1項8号,平成12年総理府令・大蔵省令第25号による改正前の貸金業の規制等に関する法律施行規則13条1項1号ハ,ヌ),これが記載されていないときには,法17条1項所定の事項の一部についての記載がされていないこととなる。ところが,原審は,上記主張事実についての認定判断をしないで,本件各承諾書写し,本件各借用証書控え,本件各債務弁済契約証書写し及び本件金銭消費貸借契約証書写しの交付により,本件各貸付けにつき法17条1項所定の要件を具備した書面の交付があったと判断したものであって,原審の前記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

(3) 法18条1項は,貸金業者が,貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは,その都度,直ちに,同項所定の事項を記載した書面(以下「18条書面」という。)をその弁済をした者に交付しなければならない旨を定めている。
本件各弁済は銀行振込みの方法によってされているが,利息の制限額を超える金銭の支払が貸金業者の預金口座に対する払込みによってされたときであっても,特段の事情のない限り,法18条1項の規定に従い,貸金業者は,この払込みを受けたことを確認した都度,直ちに,18条書面を債務者に交付しなければならないと解すべきである(最高裁平成8年(オ)第250号同11年1月21日第一小法廷判決・民集53巻1号98頁参照)。
そして,17条書面の交付の場合とは異なり,18条書面は弁済の都度,直ちに交付することを義務付けられているのであるから,18条書面の交付は弁済の直後にしなければならないものと解すべきである。
【要旨3】前記のとおり,上告人による本件各弁済の日から20日余り経過した後に,被上告人から上告人に送付された本件各取引明細書には,前回の支払についての充当関係が記載されているものがあるが,このような,支払がされてから20日余り経過した後にされた本件各取引明細書の交付をもって,弁済の直後に18条書面の交付がされたものとみることはできない(なお,前記事実関係によれば,本件において,その支払について法43条1項の規定の適用を肯定するに足りる特段の事情が存するということはできない。)。これと異なる原審の前記3(3)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

5 以上によれば,上記の諸点についての論旨はいずれも理由があり,その余の論旨及び上告理由について判断するまでもなく,原判決は破棄を免れない。そこで,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官滝井繁男の補足意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

裁判官滝井繁男の補足意見は,次のとおりである。
私は,法廷意見に賛成するものであるが,利息制限法と法43条1項との関係についての論旨にかんがみ,この点についての私の意見を補足して述べておきたい。
法43条1項は,債務者が利息制限法を超える利息を支払った場合であっても,その支払が任意に行われ,かつ,貸金業者が法所定の業務規制に従って法17条及び18条各所定の要件を具備した書面を債務者に交付しているときは,その支払を例外的に有効な利息の債務の弁済とみなしている。
ここで任意の弁済とは,債務者が自己の自由な意思に基づいて支払ったことをいうべきところ,本件のような天引きが行われたときは,債務者が天引き分を自己の自由な意思に基づいて利息として支払ったものということはできないから,この点からも,天引きされた部分に関する限り法43条1項の適用を受けることはできないものといわなければならない。
また,本件各貸付けの中には,取引21,23,27,30の各貸付けのように,元本の弁済期を契約日の約5年後とした上で,その間,利息の制限額を超える部分を含む利息等を1か月ごとに前払することとし,その支払を怠れば,期限の利益を失い,債務全額を即時弁済することを求められるとともに,年40.004%の割合による損害金を支払わなければならないとの内容の条項を含んだ取引約定書を用いているものがある。
このような条項を含む取引においては,約定に従って利息の支払がされた場合であっても,その支払は,その支払がなければ当初の契約において定められた期限の利益を失い,遅延損害金を支払わなければならないという不利益を避けるためにされたものであって,債務者が自己の自由な意思に従ってしたものということはできない。
このような期限の利益喪失条項は,当事者間の合意に基づくものではあるが,そのような条項に服さなければ借り入れることができない以上,利息制限法の趣旨に照らして,この約定に基づく支払を任意の支払ということはできないものというべきである。
また,法43条1項の規定が,利息制限法上無効となる約定に従ってされた利息の支払であっても,金融業者が厳格な遵守を求められている前記業務規制に従って法17条及び18条各所定の要件を具備した書面を債務者に交付している場合に限ってその任意の支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めていることなどから,その適用要件の解釈を厳格にすべきことは法廷意見の指摘するとおりである。
このような,法43条1項の規定の趣旨からすると,17条書面及び18条書面には,単に所定の事項がすべて記載されていなければならないというにとどまらず,所定の事項が正確かつ容易に債務者に理解できるように記載されていることが求められているものといわなければならない。
以上によれば,17条書面は,本来,一通の書面によるべきものである。そして,法17条1項が債務者に同項所定の事項についての正確な認識を得させることを目的とするものであることを考慮すると,例外的に複数の書面によらざるを得ない場合であっても,各文書に所定の事項がすべて記載されていることはもとより,各文書間の相互の関連が明らかになっていて,その記載内容が債務者に正確かつ容易に理解し得るようになっていなければならないというべきである。
これを本件についてみると,本件各貸付けの中には,契約時に上告人に交付された本件各借用証書控えには,約1か月後に元本を一括弁済するとの定めがあるものの,別に交付された本件各承諾書写しには,被上告人が認めた場合には,別途送付される取引明細書記載の利息を支払うことを条件に,所定の期間継続取引ができるとの約定をした上で,この約定によって1か月ごとの取引の延長を繰り返しているものが少なくない。
上記の約定に基づいて弁済期が延長された場合は,契約内容に変更があったものとみるべきであって,その変更内容を記載した17条書面の交付が必要であると解されるところ,本件においては,被上告人は,17条書面として,これを記載した書面を上告人に交付していない。もっとも,本件では弁済期の10日前ころに,被上告人から上告人に当該借入金に係る1か月分の前払利息等の銀行振込みを求める本件各取引明細書が送付されていることから,上告人は,それによって所定の日までに所定の利息等を振り込めば弁済期が延長されることを理解し得るものの,振込みが所定の期日に遅れた場合又は所定の金額に足りない振込みが行われた場合には,上告人は,その次の前払利息を催告する際に送付される本件各取引明細書に前回の支払の充当関係が記載されているのを見るまでは,弁済期が延長されたかどうかを知ることはできないのである。このような点を考慮すると,上記の本件各借用証書控え,本件各承諾書写し,本件各取引明細書は,その相互の関連が必ずしも明らかではなく,これらの書面によって,上告人が法17条1項所定の事項を正確かつ容易に理解し得るかは疑問であり,また,17条書面が遅滞なく交付されたとみることもできない。
したがって,上記各書面の交付によっては,法17条1項所定の要件を具備した書面の交付があるとはいえないから,法43条1項所定の要件を備えているものとはいえないものというべきである。

(裁判長裁判官 滝井繁男 裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫)

 

 

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最高裁平成21年1月22日第一小法廷判決・民集第63巻1号247頁(対東日本信販)

2016-09-01

主文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山口正徳の上告受理申立て理由について

1 本件は,被上告人が,貸金業者である上告人に対し,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの。以下同じ。)1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると,過払金が発生していると主張して,不当利得返還請求権に基づき,その支払を求める事案である。
上告人は,上記不当利得返還請求権の一部については,過払金の発生時から10年が経過し,消滅時効が完成していると主張して,これを援用した。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
貸主である上告人と借主である被上告人は,1個の基本契約に基づき,第1審判決別紙「法定金利計算書⑧」の「借入金額」欄及び「弁済額」欄記載のとおり,昭和57年8月10日から平成17年3月2日にかけて,継続的に借入れと返済を繰り返す金銭消費貸借取引を行った。
上記の借入れは,借入金の残元金が一定額となる限度で繰り返し行われ,また,上記の返済は,借入金債務の残額の合計を基準として各回の最低返済額を設定して毎月行われるものであった。
上記基本契約は,基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)を含むものであった。

3 このような過払金充当合意においては,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金に係る不当利得返還請求権(以下「過払金返還請求権」という。)を行使することは通常想定されていないものというべきである。したがって,一般に,過払金充当合意には,借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず,これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当である。そうすると,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり,過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当である。
借主は,基本契約に基づく借入れを継続する義務を負うものではないので,一方的に基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を終了させ,その時点において存在する過払金の返還を請求することができるが,それをもって過払金発生時からその返還請求権の消滅時効が進行すると解することは,借主に対し,過払金が発生すればその返還請求権の消滅時効期間経過前に貸主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることを求めるに等しく,過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反することとなるから,そのように解することはできない(最高裁平成17年(受)第844号同19年4月24日第三小法廷判決・民集61巻3号1073頁,最高裁平成17年(受)第1519号同19年6月7日第一小法廷判決・裁判集民事224号479頁参照)。
したがって,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。

これを本件についてみるに,前記事実関係によれば,本件において前記特段の事情があったことはうかがわれず,上告人と被上告人の間において継続的な金銭消費貸借取引がされていたのは昭和57年8月10日から平成17年3月2日までであったというのであるから,上記消滅時効期間が経過する前に本件訴えが提起されたことが明らかであり,上記消滅時効は完成していない
以上によれば,原審の判断は結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官泉徳治 裁判官甲斐中辰夫 裁判官涌井紀夫 裁判官宮川光治 裁判官櫻井龍子)

 

 

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最高裁平成23年12月1日第一小法廷判決・集民第238号189頁(対CFJ)

2016-08-31

同旨の判例として、最高裁平成23年(受)第407号同年12月1日第一小法廷判決(対プロミス)、最高裁平成23年(受)第1592号同年12月15日第一小法廷判決(対アコム)がある。

主 文
1 原判決を破棄する。
2 被上告人の控訴を棄却する。
3 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
理 由
上告代理人田中庄司ほかの上告受理申立て理由第2について

1 本件は,上告人が,A及び同社を吸収合併した被上告人との間の継続的な金銭消費貸借取引と,B及び同社から債権譲渡を受けた被上告人との間の継続的な金銭消費貸借取引について,各弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金が発生しており,かつ,被上告人は過払金の取得が法律上の原因を欠くものであることを知っていたとして,被上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金及び民法704条前段所定の利息等の支払を求める事案である。
本件の争点は,被上告人が過払金の取得について民法704条の「悪意の受益者」であるか否かである。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

(1) 被上告人,A及びBは,貸金業法(平成18年法律第115号による改正前の法律の題名は貸金業の規制等に関する法律。以下,同改正の前後を通じて「貸金業法」という。)3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2) Aは,上告人との間で,平成8年8月13日から平成14年12月30日までの間,原判決別紙「計算書1 XA取引」の「貸付金額」欄及び「入金額」欄記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引を行った。被上告人は,平成15年1月1日にAを吸収合併して上記金銭消費貸借取引に係る貸主の地位を承継し,引き続き上告人との間で,同月31日から平成21年11月1日までの間,同別紙の「貸付金額」欄及び「入金額」欄記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引を行った(以下,A及び被上告人と上告人との間の上記取引を「第1取引」という。)。

(3) Bは,上告人との間で,平成9年2月18日から平成14年4月4日までの間,原判決別紙「計算書2 XB取引」の「貸付金額」欄及び「入金額」欄記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引を行った。被上告人は,同年5月2日にBから上記金銭消費貸借取引に係る上告人に対する債権の譲渡を受け,引き続き上告人との間で,同月7日から平成21年11月1日までの間,同別紙の「貸付金額」欄及び「入金額」欄記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引を行った(以下,B及び被上告人と上告人との間の上記取引を「第2取引」といい,第1取引と第2取引を併せて「本件各取引」という。)。

(4) 本件各取引は,基本契約の下で,借入限度額の範囲内で借入れと返済を繰り返すことを予定して行われたもので,その返済の方式は,全貸付けの残元利金について,毎月の返済期日に最低返済額を支払えば足りるとする,いわゆるリボルビング方式の一つである。
本件各取引において貸金業法(平成18年法律第115号による改正前のもの。 以下同じ。)17条1項所定の事項を記載した書面(以下「17条書面」という。)として上告人に交付された各書面には,同項6号に掲げる「返済期間及び返済回数」や貸金業法施行規則(平成19年内閣府令第79号による改正前のもの。 以下同じ。なお,同改正前の題名は貸金業の規制等に関する法律施行規則)13条1項1号チに掲げる各回の「返済金額」(以下,「返済期間及び返済回数」と各回の「返済金額」を併せて「返済期間,返済金額等」という。)に代わるものとして,平成16年9月までは,次回の最低返済額とその返済期日の記載がされていたにとどまり,同年10月以降になって,個々の貸付けの時点での残元利金について最低返済額を毎月の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等の記載(以下「確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載」という。)がされるようになった。

(5) 本件各取引において上告人がした各弁済(以下「本件各弁済」という。) のうち制限超過部分の支払は,貸金業法43条1項の適用要件を欠き,有効な利息の債務の弁済とはみなされない。制限超過部分を各貸付金の元本に充当すると,第1取引については平成13年2月1日以降,第2取引については平成16年6月30日以降,終始過払の状態が継続していた。

3 原審は,上記事実関係等の下において,次のとおり判断し,被上告人は民法704条の「悪意の受益者」であると認めることができないとして,上告人の請求のうち被上告人の控訴に係る部分を棄却した。

(1) 貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情(以下「平成19年判決の判示する特段の事情」という。)があるときでない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を受領した者,すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定される(最高裁平成17年(受)第1970号同19年7月13日第二小法廷判決・民集61巻5号1980頁)。

(2) リボルビング方式による貸付けについては,貸金業者において,個々の貸付けの際に,17条書面として借主に交付する書面に,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載をすべき義務があり,基本契約書の記載と各貸付けの都度借主に交付された書面の記載とを併せても,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載がないときは,17条書面の交付があったということはできない旨を判示した最高裁平成17年(受)第560号同年12月15日第一小法廷判決・民集59巻10号2899頁(以下「平成17年判決」という。)が言い渡されるまでは,17条書面に記載すべき事項について下級審の裁判例が分かれており,次回の最低返済額とその返済期日が記載されていれば足りるとする裁判例も相当程度存在し,監督官庁が貸金業法17条1項各号に掲げる事項のうち特定し得る事項のみ 記載すれば足りると読むこともできる通達を出していた。 上記事情の下では,平成17年判決が言い渡されるまでは,貸金業者において,リボルビング方式の貸付けにつき借主に17条書面として交付する書面に確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載がないことから直ちに貸金業法43条1項の要件が否定されるものではないとの認識を有していたとしてもやむを得ないというべきであり,被上告人及びAが上記認識を有していたことについては,平成19年判決の判示する特段の事情があると認めるのが相当である。

(3) そして,本件各弁済のうち制限超過部分の支払について,貸金業法43条1項のその余の要件との関係でも,被上告人を悪意の受益者であると推定することはできず,ほかに被上告人が悪意の受益者であると認めるに足りる証拠はない。なお,被上告人とBとの間で前記の債権譲渡がされた時点では,第2取引につき過払金は発生しておらず,Bの認識等は,本件各取引における過払金の発生とは関係がない。

4 しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1) 貸金業法17条1項6号及び貸金業法施行規則13条1項1号チが17条書面に返済期間,返済金額等の記載をすることを求めた趣旨・目的は,これらの記載により,借主が自己の債務の状況を認識し,返済計画を立てることを容易にすることにあると解される。リボルビング方式の貸付けがされた場合において,個々の貸付けの時点で,上記の記載に代えて次回の最低返済額及びその返済期日のみが記載された書面が17条書面として交付されても,上記の趣旨・目的が十全に果たされるものではないことは明らかである反面,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載をすることは可能であり,かつ,その記載があれば,借主は,個々の借入れの都度,今後,追加借入れをしないで,最低返済額を毎月の返済期日に返済していった場合,いつ残元利金が完済になるのかを把握することができ,完済までの期間の長さ等によって,自己の負担している債務の重さを認識し,漫然と借入れを繰り返すことを避けることができるのであるから,これを記載することが上記の趣旨・目的に沿うものであることは,平成17年判決の言渡し日以前であっても貸金業者において認識し得たというべきである。
そして,平成17年判決が言い渡される前に,下級審の裁判例や学説において,リボルビング方式の貸付けについては,17条書面として交付する書面に確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載がなくても貸金業法43条1項の適用があるとの見解を採用するものが多数を占めていたとはいえないこと,上記の見解が貸金業法の立法に関与した者によって明確に示されていたわけでもないことは,当裁判所に顕著である。
上記事情の下では,監督官庁による通達や事務ガイドラインにおいて,リボルビング方式の貸付けについては,必ずしも貸金業法17条1項各号に掲げる事項全てを17条書面として交付する書面に記載しなくてもよいと理解し得ないではない記載があったとしても,貸金業者が,リボルビング方式の貸付けにつき,17条書面として交付する書面には,次回の最低返済額とその返済期日の記載があれば足り,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載がなくても貸金業法43条1項の適用が否定されるものではないとの認識を有するに至ったことがやむを得ないということはできない。
そうすると,リボルビング方式の貸付けについて,貸金業者が17条書面として交付する書面に確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載をしない場合は,平成17年判決の言渡し日以前であっても,当該貸金業者が制限超過部分の受領につき貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有することに平成19年判決の判示する特段の事情があるということはできず,当該貸金業者は,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。

(2) これを本件についてみると,前記事実関係によれば,本件各取引において17条書面として上告人に交付された各書面には,平成16年9月までは,次回の最低返済額とその返済期日の記載があったにとどまり,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載がなかったというのであるから,被上告人又はAにおいて平成19年判決の判示する特段の事情があるということはできず,被上告人及びAは,この時期までに本件各取引から発生した過払金の取得につき悪意の受益者であると推定されるものというべきであり,この推定を覆すべき事情は見当たらない。
そして,同年10月以降は,本件各取引において17条書面として上告人に交付された各書面に確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載がされるようになったが,それより前から本件各取引は継続して過払の状態となり貸金債務は存在していなかったというのであるから,同月以降は,利息が発生する余地はなく,この時期にされた制限超過部分の支払につき貸金業法43条1項を適用してこれを有効な利息の支払とみなすことができないことは明らかである。そうすると,本件各取引につき,同月以降,17条書面として交付された書面に上記の記載があったとしても,被上告人がそれまでに発生した過払金の取得につき悪意の受益者である以上,この時期に発生した過払金の取得についても悪意の受益者であることを否定することはできない
よって,被上告人は,本件各取引における過払金の取得について民法704条の「悪意の受益者」であるというべきである。

5 以上によれば,被上告人は悪意の受益者であると認めることができないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。
そして,以上説示したところによれば,上告人の請求のうち被上告人の控訴に係る部分は理由があり,これを認容した第1審判決は正当であるから,被上告人の控訴を棄却すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官宮川光治 裁判官櫻井龍子 裁判官金築誠志 裁判官横田尤孝 裁判官白木 勇)

 

 

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