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人生100年時代!? 年金制度に対する新たな提言

2016-11-02

10月26日、自民党:小泉進次郎氏らが「人生100年時代の社会保障へ」と題した提言をまとめ、年金制度の大幅な見直しを提言しました。

年金の受給開始年齢の上限を現在の70歳から引き上げ、と同時に、高齢者も給料から年金掛け金を支払って納める対象になるという内容です。

少子高齢化社会で若者が減ることから年金の支給範囲を削減し、高齢者からも年金掛け金を集めて、年金制度の維持を図る目的です。

「働からざる者は食うべからず」とは聖書の言葉らしいですね。しかし、人生の目的が「働くこと」である人は別として、童話のキリギリスのように(少なくとも老後は)余暇を重視したいと考える人にとっては、到底納得できない提言だと思います。

退職,年金

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最高裁平成24年(受)第651号平成25年4月16日第三小法廷判決

2016-10-01

主 文
原判決を破棄する。
本件を福岡高等裁判所に差し戻す。

理 由
上告代理人大窪和久の上告受理申立て理由について
1 本件は,弁護士である被上告人に債務整理を依頼した第1審原告亡Aの相続人である上告人が,被上告人に対し,債務整理の方針についての説明義務違反があったことなどを理由として,債務不履行に基づき慰謝料等を損害賠償として求める事案である。

2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 弁護士である被上告人は,平成17年6月30日,Aから,消費者金融業者に合計約250万円の債務があるなどとして,その債務整理について相談を受けた。被上告人は,債務の返済状況等を聴取した後,Aに対し,過払金が生じている消費者金融業者から過払金を回収した上,これを原資として他の債権者に一括払による和解を提案して債務整理をすること,債務整理費用が30万円であり,過払金回収の報酬が回収額の3割であることなどを説明し,被上告人とAは,同日,債務整理を目的とする委任契約を締結した。
(2) 被上告人は,利息制限法所定の制限利率に従い,Aが債権者に弁済した元利金の充当計算をしたところ,B(当時の商号はC)及びDに対してはまだ元本債務が残っているが,E,F及びGに対しては過払金が発生していることが判明した。
そこで,被上告人は,平成17年9月27日までに,Aの訴訟代理人として,E,F及びGに対して過払金返還請求訴訟を提起し,その後,上記3社とそれぞれ和解をして,平成18年6月2日までに,合計159万6793円の過払金を回収した。
(3) 被上告人は,上記3社から回収した過払金により,B及びDに対する支払原資を確保できたものと判断し,平成18年6月12日,B及びDに対し,「ご連絡(和解のご提案)」と題する文書を送付して,元本債務の8割に当たる金額(Bについては30万9000円,Dについては全ての取引を一連のものとして計算した9万4000円)を一括して支払うという和解案を提示した。上記文書には,「御社がこの和解に応じていただけない場合,預った金は返してしまい,5年の消滅時効を待ちたいと思います。」,「訴訟等の債権回収行為をしていただいても構いませんが,かかった費用を回収できない可能性を考慮のうえ,ご判断ください。」などと記載されていた。
Bは上記の内容による和解に応じたが,Dはこれに応じなかった。
(4) 被上告人は,平成18年7月31日頃,A方に電話をかけ,Aに対し,回収した過払金の額やDに対する残元本債務の額について説明したほか,Dについてはそのまま放置して当該債務に係る債権の消滅時効の完成を待つ方針(以下「時効待ち方針」という。)を採るつもりであり,裁判所やDから連絡があった場合には被上告人に伝えてくれれば対処すること,回収した過払金に係る預り金を返還するがDとの交渉に際して必要になるかもしれないので保管しておいた方が良いことなどを説明した。
また,被上告人は,その頃,Aに対し,「債務整理終了のお知らせ」と記載された文書を送付した。同文書には,Dに対する未払分として29万7840円が残ったが消滅時効の完成を待とうと考えているなどと記載されていた。
(5) 被上告人は,平成18年8月1日,回収した過払金合計159万6793円から過払金回収の報酬47万9038円及び債務整理費用30万円の合計77万9038円,Bに支払った和解金等を差し引く経理処理を行い,残額の48万7222円から振込費用を控除した残金をAに送金した。
(6) 被上告人は,平成21年4月24日,Aに対し,消費者金融業者の経営が厳しくなったため以前よりも提訴される可能性が高くなっており,12万円程度の資金を用意できればそれを基に一括して支払う内容での和解交渉ができるなどと説明したが,Aは,被上告人が依頼者から債務整理を放置したことを理由とする損害賠償請求訴訟を提起されたとの報道等を受けて,被上告人による債務整理に不安を抱くようになり,同年6月15日,被上告人を解任した。
Aは,上告代理人に改めて債務整理を委任した。上告代理人は,Aの代理人としてDと交渉し,平成21年12月17日,AがDに対して和解金50万円を分割して支払う内容の和解を成立させた。
(7) Aは,平成22年3月16日,本件訴訟を提起したが,第1審係属中である平成23年3月20日に死亡し,その妻である上告人が本件訴訟に係るAの権利を承継した。

3 原審は,上記事実関係等の下において,債務整理の方針についての説明義務
違反の有無について,Aが,被上告人から上記2(1)及び(4)に記載の内容等の説明を受け,被上告人の採る債務整理の方針に異議を述べず,その方針を黙示に承諾したと認められることなどからすれば,被上告人が上記説明義務に違反したとは認められないと判断して,上告人の請求を棄却した。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
本件において被上告人が採った時効待ち方針は,DがAに対して何らの措置も採らないことを一方的に期待して残債権の消滅時効の完成を待つというものであり,債務整理の最終的な解決が遅延するという不利益があるばかりか,当時の状況に鑑みてDがAに対する残債権の回収を断念し,消滅時効が完成することを期待し得る合理的な根拠があったことはうかがえないのであるから,Dから提訴される可能性を残し,一旦提訴されると法定利率を超える高い利率による遅延損害金も含めた敗訴判決を受ける公算が高いというリスクをも伴うものであった。
また,被上告人は,Aに対し,Dに対する未払分として29万7840円が残ったと通知していたところ,回収した過払金から被上告人の報酬等を控除してもなお48万円を超える残金があったのであるから,これを用いてDに対する残債務を弁済するという一般的に採られている債務整理の方法によって最終的な解決を図ることも現実的な選択肢として十分に考えられたといえる。
このような事情の下においては,債務整理に係る法律事務を受任した被上告人は,委任契約に基づく善管注意義務の一環として,時効待ち方針を採るのであれば,Aに対し,時効待ち方針に伴う上記の不利益やリスクを説明するとともに,回収した過払金をもってDに対する債務を弁済するという選択肢があることも説明すべき義務を負っていたというべきである。
しかるに,被上告人は,平成18年7月31日頃,Aに対し,裁判所やDから連絡があった場合には被上告人に伝えてくれれば対処すること,Dとの交渉に際して必要になるかもしれないので返還する預り金は保管しておいた方が良いことなどは説明しているものの,時効待ち方針を採ることによる上記の不利益やリスクをAに理解させるに足りる説明をしたとは認め難く,また,Dに対する債務を弁済するという選択肢について説明したことはうかがわれないのであるから,上記の説明義務を尽くしたということはできない。そうである以上,仮に,Aが時効待ち方針を承諾していたとしても,それによって説明義務違反の責任を免れるものではない。

5 以上によれば,原審の上記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そこで,損害の点等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官田原睦夫,同大橋正春の各補足意見がある。

裁判官田原睦夫の補足意見は,次のとおりである。
本件訴訟では,依頼者から債務整理について受任した弁護士の依頼者に対する説明義務の有無及びその内容,並びに債権者に対し「時効待ち」の方針を採ることの適否が問題となっているところ,それらの諸点について,本件事案に即して以下に補足的に意見を述べる。

1 債務整理の依頼を受けた弁護士の説明・報告義務について
(1) 受任時における説明義務について
弁護士は,法律事務の依頼を受ける依頼者に対しては,委任契約締結過程における信義則上の義務の一環として,依頼を受けることとなる事務の内容に関して説明義務を負うものであるが,その受任する事務の内容は,一般に法律事務としての専門性が高く,またその事務の性質上受任者に一定の裁量権を伴うことが前提とされるところから,その受任時において,その委任契約の締結に伴う種々の問題点について説明すべき義務を負っているものというべきである。以下,その具体的内容についてみてみる。
ア 依頼者から債務整理の依頼を受けた弁護士は,その受任に当たり,当該事案に応じて適切と認められる法的手続(例えば破産,個人再生,特定調停,私的整理等)について,依頼者の資力や依頼者自身の対応能力等に応じて適切な説明をなすべき責任がある。
イ その説明に当たっては,それらの各手続に要する時間やコスト,依頼者自らが行うべき事務等の負担の内容等,メリット・デメリット(破産手続を選択する場合の免責の見込みの有無,免責を受けられない場合の就業制限等の制約内容,個人再生手続を選択する場合の履行の見込み,各手続と保証人等関係者への影響の有無,程度等)を説明することが求められる。
ウ 依頼者が経済的に困窮しているような場合には,法律扶助手続の制度の説明も含まれるというべきである。
エ なお,本件記録を見る限り,被上告人が本件受任時に上記の説明義務を尽くしていたかという点については,大きな疑義が残る。
(2) 受任後の説明義務について
弁護士は,依頼者から法律事務の委任を受けた後は,途中経過についての報告義務を免除するなどの特段の合意がない限り,委任契約における善管注意義務の一環として,適宜に受任事務の遂行状況について報告し,説明すべき義務を負うものというべきである。殊に,委任事務の内容が財産の管理にかかわるものである場合,その財産管理の状況を適宜に報告すべきことは委任事務の性質上当然と言えよう。
そして,債務整理は,財産管理に係る事務であるから,債務者から途中経過の報告義務を全面的に免除する旨の明示の意思表示を受けている等の特別の事情のない限り,受任者として受任事務の区切り毎に報告・説明すべき義務があるものというべきである。
殊に,過払金返還請求は,積極財産の処理である以上,かかる義務が存するのは当然である(民法644条による直接の効果であり,同法645条の請求による報告義務とは別の義務である。本件では原審までの審理過程において,委任者の自己決定権との関係について双方が主張を闘わしているが,それとは直接関係しないものというべきである。)。
なお,上記の報告・説明義務の内容には,受任時以降の事案の進展状況に応じたその後の見通し,対応等に関する説明義務が当然に含まれるものというべきである。

2 受任事務の遂行にかかる善管注意義務について
(1) 受任事務の遂行と裁量権の行使について
一般に弁護士の受任する法律事務の遂行においては,弁護士業務の専門性との関係上,委任契約に特段の定めがない限り受任者たる弁護士に一定の裁量権が認められていると解することができる。
しかし,その裁量権の行使に当たっては,専門家としての善管注意義務を尽くして行使すべきものであって,その行使の際に専門家として通常考慮すべき事項を考慮せず,あるいはその行使の内容が,専門家たる弁護士が行うものとして社会的に許容される範囲(それは,弁護士倫理上許容される範囲と必ずしも一致するものではない。)を超え,その結果依頼者外の関係者の権利を侵害するに至る場合には,善管注意義務違反が問われることとなる。
(2) 受任事務の適宜遂行義務について
受任者は,その受任事務を,その事務の性質上社会的に許容される期間内に適切に処理すべき義務を受任者としての善管注意義務の内容として求められる。
その履行が,その事務の性質上通常求められる期間を超えた場合には,債務不履行責任を問われることとなり,また,弁護士倫理違反として懲戒処分の対象となり得る。

3 本件における「時効待ち」手法の選択と善管注意義務について
(1) 債務整理における「時効待ち」手法の選択の可否について
ア 債務整理における債権者に対する誠実義務
債務整理を受任した弁護士が,その対象となる債権者に受任通知及び債務整理についての協力依頼の旨を通知した場合には,債権者は,正当な理由のない限りこれに誠実に対応し,合理的な期間は強制執行等の行動に出ることを自制すべき注意義務を負担し,それに違反する場合には不法行為責任を負うものと解されている(東京高裁平成9年6月10日判決・高裁民事判例集50巻2号231頁)こととの対応上,かかる通知を発した弁護士は,その対象となる債権者に対して,誠実に且つ衡平に対応すべき信義則上の義務を負うものというべきである。
そして,受任弁護士の債権者に対する不誠実な対応の結果,債権者との関係が悪化し通常の対応がなされていれば適宜の解決が図れたのにも拘ずその解決が遅れ,その結果,依頼者がその遅延に伴い過分な負担を負うこととなった場合には,当該弁護士は依頼者に対して債務不履行責任を負うことがあり得るといえる。
上記で述べたところからすれば,受任した弁護士が一部の債権者と示談を進め乍ら,他の債権者との交渉をすることなく「時効待ち」を行ったり,債権者と誠実な交渉を行うことなく一方的に示談条件を提示し,その条件以外では示談に応じることを拒み,他の債権者とのみ交渉を行うようなことは許容されないと言わねばならない。
イ 債務整理における「時効待ち」の手法と債務者の地位
弁護士が債務整理につき受任する場合,債務者の経済的再生の環境を整えることがその最大の責務であり,専門家としてそれに最も適した債務整理の手法を選択して,それを債務者に助言すべき義務を善管注意義務の内容として負っているものというべきである。
債務者が経済的再生を図るには,債権者からの取立ての不安を払拭し,安心して自らの再生への途を踏む態勢を整えることが肝要であり,債務整理に徒に時間を費やすべきではない。
かかる観点からすれば,債務整理の手段として「時効待ち」の手法を採ることは,対象債権者との関係では,時効期間満了迄債務者を不安定な状態に置くこととなり,その間に訴訟提起された場合には,多額の約定遅延損害金が生じ,又債権者が既に債務名義を取得している場合には,給与債権やその他の財産に対する差押えを受ける可能性がある等,債務者の再生に支障を来しかねないのであって,原則として適切な債務整理の手法とは言えない。かかる手法は,債権者と連絡がとれず交渉が困難であったり,債権者が強硬で示談の成立が困難であり且つ当該債権者の債権額や交渉対応からして訴の提起や差押え等債務者の再生の支障となり得る手段を採ることが通常予測されない等,特段の事情があると認められる場合に限られるべきである。
そして,債権者が上場企業等一定の債権管理体制を備えている企業の場合には,一般に,債権の時効管理は厳格に行われており,超小口債権で回収費用との関係から法的手続を断念することが予想されるような場合を除き,時効まで放置することは通常あり得ないのであって,かかる債権者に対して「時効待ち」の手法を採ることは,弁護士としての善管注意義務違反に該るということができる。
なお,債務整理に関する一部の文献に,債務整理の手法として「時効待ち」の手法が紹介されていることをもって被上告人はその主張の根拠としているが,法的な正当性を欠くそのような文献の存在をもって,安易に「時効待ち」の手法を採用することを合理化する理由とはならず,上記の善管注意義務を免除すべき理由とはなり得ないというべきである。
また,一部の債権者と和解し,一部の債権者に対して「時効待ち」の対応をし,その後破産手続に移行した場合には,当該債権者との和解それ自体が否認の対象となる可能性が生じるのであって,却って全体の解決を遅らせる危険も存する点についても配慮すべきである。
ウ 本件における「時効待ち」の手法の選択の適否
本件では,被上告人は,Dの残債権額について同社との間での確認作業を十分に行わず,被上告人が算定した計算結果(記録によれば,過去の取引履歴からして,取引が二口に岐れ,一口については過払金返還請求権が時効にかかっている可能性があるのにそれを無視して一連計算した結果)に基づいて一方的に示談条件を提示し,Dがそれに応じないからとの理由で「時効待ち」の方針を採用したことがうかがわれるが,かかる方針の採用自体,上述の受任弁護士としての債権者に対する誠実義務に反するものであり,又,Dが上場企業であって,企業としてシステム的に時効管理を行っていることが当然に予測される以上,「時効待ち」によってその債権が時効消滅することは通常予測し得ないのであるから,「時効待ち」の方針を採用すること自体,受任弁護士としての裁量権の逸脱が認められて然るべきである。
(2) 「時効待ち」手法の選択と説明義務について
本件において,被上告人が「時効待ち」の手法の選択をAに薦めるに当っては,Dの債権額についてDの主張する金額と被上告人が算定した金額との差異について,その理由を含めて詳細にAに対して説明し,訴訟を提起される場合に負担することとなる最大額,及び時効の成立まで相当期間掛りその間不安定な状態におかれることについて具体的に説明すべきであり,また,Dが上場企業であって,時効管理について一定のシステムを構築していることが想定されるところから,「時効待ち」が奏功しない可能性が高いことについても説明すべき義務が存したというべきである。
ところが,被上告人は,法廷意見に指摘するとおり,裁判所やDから連絡があった場合には,被上告人に伝えてくれれば対処すること,Dとの交渉に際して必要になるかもしれないので返還する預り金は保管しておいた方がよいことなどの説明はしたものの,記録によれば「時効待ち」方針を採る場合の不利益やリスクについて具体的に説明していないばかりか,仮に裁判所やDから通知があった場合に,被上告人が具体的にどのように対処するのか,その際に被上告人に対して新たな弁護士報酬が発生するのか否か,被上告人が対処することによってAは最大幾何程の経済的負担を負うことになるのか,またそれにどの程度の期間を要するのか等について,説明をしていないのであって,被上告人の説明義務違反は明らかである。

裁判官大橋正春の補足意見は,次のとおりである。
事案に鑑み,法律事務を受任した弁護士の依頼者に対する説明義務に関し,以下のとおり補足意見を述べる。
法律事務を受任した弁護士には,法律の専門家として当該事務の処理について一定の裁量が認められ,その範囲は委任契約によって定まるものであるが,特段の事情がない限り,依頼者の権利義務に重大な影響を及ぼす方針を決定し実行するに際しては,あらかじめ依頼者の承諾を得ることが必要であり,その前提として,当該方針の内容,当該方針が具体的な不利益やリスクを伴うものである場合にはそのリスク等の内容,また,他に考えられる現実的な選択肢がある場合にはその選択肢について,依頼者に説明すべき義務を負うと解される。さらに,受任した法律事務の進行状況についての報告が求められる場合もあるというべきであり,例えば,訴訟を提起して過払金を回収したような場合には,特段の事情がない限り,速やかにその内容及び結果を依頼者に報告すべき義務を負うものと解される。こうした弁護士の依頼者に対する説明義務が委任契約に基づく善管注意義務の一環として認められるものであることは,法廷意見の述べるとおりであり,上記の報告義務についても同様に解すべきであろう。
本件において被上告人が採用した時効待ち方針には,法廷意見が指摘する不利益やリスクがあり,また,他に考えられる現実的な選択肢があったのであるから,これらを説明しなかった被上告人は説明義務違反を免れないものである。更に,弁護士からの受任通知及び協力依頼に対しては,正当な理由のない限り,これに誠実に対応し,合理的な期間は強制執行等の行動に出ることを自制している貸金業者との関係においても,時効待ち方針は,債務整理を受任した弁護士が積極的に採用する
ものとしてはその適切性に疑問があり,こうした方針を採用する場合は弁護士には依頼者に対しその内容等を説明することがより強く要求される。
弁護士職務基本規程(平成16年日本弁護士連合会会規第70号。以下「基本規程」という。)36条は,「弁護士は,必要に応じ,依頼者に対して,事件の経過及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し,依頼者と協議しながら事件の処理を進めなければならない。」と弁護士の依頼者に対する報告及び説明義務を定めているが,同条はその違反が懲戒の対象となり得る行為規範・義務規定として定められたものであり(基本規程82条2項参照),弁護士と依頼者との間の委任契約の解釈適用に当たって当然に参照されるべきものである。弁護士の依頼者に対する報告及び説明義務については,自治団体である弁護士会が基本規程36条の解釈適用を通じてその内容を明確にしていくことが期待される。
(裁判長裁判官 大橋正春 裁判官 田原睦夫 裁判官 岡部喜代子 裁判官
大谷剛彦 裁判官 寺田逸郎)

 

 

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最高裁平成19年6月7日第一小法廷判決・民集第61巻4号1537頁(対オリコ)

2016-09-30

主文
1  原判決中不当利得返還請求に係る部分につき本件上 告を棄却する。
2  その余の本件上告を却下する。
3  上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人水中誠三ほかの上告受理申立て理由第1,第3及び第4について

1  原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

(1) 上告人は,貸金業の規制等に関する法律3条所定の登録を受けて貸金業を営む貸金業者である。

(2) 上告人は,昭和63年6月ころ,被上告人との間で,被上告人を会員とするクレジットカード会員契約を締結し,被上告人に対し,「Aカード」という名称のクジットカードを交付した。上記契約には金銭消費貸借に関する契約の条項(以下,この条項を「本件基本契約1」という。)が含まれていたところ,後記(4)記載の期間における本件基本契約1の内容は,次のとおりである。

ア 借入方法
会員は,借入限度額の範囲内において1万円単位で繰り返し上告人から金員の借入れをすることができる。

イ 返済方法
指定された回数に応じて毎月同額の元本及び利息を分割して返済する方法(いわゆる元利均等分割返済方式),毎月末日の借入残高に応じて定められる一定額を返済する方法(いわゆる残高スライドリボルビング方式)又は1回払の方法の中から会員が選択する。

ウ 借入利率
元利均等分割返済方式による借入れにつき原則として年26.4%,それ以外の返済方式による借入れにつき原則として年27.6%とする。

エ 利息の計算方法
前月27日の返済後の残元金に対し前月28日から当月27日までの実質年利(日割計算)を乗じて算出する。

オ 返済金の支払方法
毎月27日に会員の指定口座からの口座振替の方法により支払う。

(3) 上告人は,平成3年12月ころ,被上告人との間で,被上告人を会員とするローンカード会員契約(以下「本件基本契約2」といい,本件基本契約1と併せて「本件各基本契約」という。)を締結し,被上告人に対し,「B」という名称のローンカードを交付した。後記(4)記載の期間における上記契約の内容は,次のとおりである。

ア 借入方法
会員は,借入限度額の範囲内において1万円単位で繰り返し上告人から金員の借入れをすることができる。

イ 返済方法
翌月に一括して返済する方法又は毎月の借入残高に応じて定められる一定額を返済する方法(いわゆる残高スライドリボルビング方式)のいずれかから会員が選択する。

ウ 借入利率年22.6%

エ 利息の計算方法
前月27日の返済後の残元金に対し前月28日から当月27日までを1か月として計算する。

オ 返済金の支払方法
毎月27日に会員の指定口座からの口座振替の方法により支払う。

(4) 上告人は,被上告人に対し,平成3年8月2日から平成16年1月31日までの間,本件基本契約1に基づき,原判決別紙計算表2②の「年月日」欄記載の 各年月日に「借入金額」欄記載の各金員を貸し付け,被上告人は,上告人に対し,同計算表の「年月日」欄記載の各年月日に「弁済額」欄記載の各金員を支払った。
上告人は,被上告人に対し,平成3年12月24日から平成16年1月31日までの間,本件基本契約2に基づき,原判決別紙計算表2①の「年月日」欄記載の各年月日に「借入金額」欄記載の各金員を貸し付け,被上告人は,上告人に対し,同計算表の「年月日」欄記載の各年月日に「弁済額」欄記載の各金員を支払った(以下,本件各基本契約に基づくそれぞれ一連の取引を「本件各取引」という。)。

2  本件は,被上告人が,上告人に対し,本件各取引のそれぞれにつき,本件各基本契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると,過払金が発生し,かつ,この過払金を同一の基本契約において弁済当時存在する債務又はその後に発生する新たな貸付けに係る債務に充当してもなお過払金が残存しているとして,不当利得返還請求権に基づき,本件各取引において発生した過払金の支払等を求める事案である。

3  原審は,前記事実関係の下において,本件各取引はそれぞれが本件各基本契約に基づいて反復して行われた融資取引であること,本件各基本契約においては借入金の利息や返済方法等の基本的な事項が定められていること,本件各基本契約締結の際に重要な事項に関する審査は終了しており,各貸付けの際には事故発生の有無等の消極的な審査がされるにすぎないこと,貸付けと返済は利用限度額の範囲内で頻繁に繰り返されることが予定されていることなどの本件各基本契約と各貸付けの性質・関係に照らすと,本件各取引はそれぞれが全体として一個の取引であり,各取引内において,被上告人が支払った制限超過部分が元本に充当された結果過払金が発生し,その後に新たな貸付けに係る債務が発生した場合であっても,当該過払金は上記貸付けに係る債務に当然に充当されるものと解すべきであると判断して,被上告人の上告人に対する不当利得返還請求を一部認容した。

4  所論は,過払金の充当に関する原審の上記判断の法令違反をいうものである。
よって検討するに,同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主がそのうちの一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り,弁済当時存在する他の借入金債務に充当されると解するのが相当である(最高裁平成13年(受)第1032号,第1033号同15年7月18日第二小法廷判決・民集57巻7号895頁,最高裁平成12年(受)第1000号同15年9月11日第一小法廷判決・裁判集民事210号617頁参照)。これに対して,弁済によって過払金が発生しても,その当時他の借入金債務が存在しなかった場合には,上記過払金は,その後に発生した新たな借入金債務に当然に充当されるものということはできない。しかし,この場合においても,少なくとも,当事者間に上記過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するときは,その合意に従った充当がされるものというべきである。
これを本件についてみるに,前記事実関係等によれば,上告人と被上告人との間で締結された本件各基本契約において,被上告人は借入限度額の範囲内において1万円単位で繰り返し上告人から金員を借り入れることができ,借入金の返済の方式は毎月一定の支払日に借主である被上告人の指定口座からの口座振替の方法によることとされ,毎月の返済額は前月における借入金債務の残額の合計を基準とする一定額に定められ,利息は前月の支払日の返済後の残元金の合計に対する当該支払日の翌日から当月の支払日までの期間に応じて計算することとされていたというのである。これによれば,本件各基本契約に基づく債務の弁済は,各貸付けごとに個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく,本件各基本契約に基づく借入金の全体に対して行われるものと解されるのであり,充当の対象となるのはこのような全体としての借入金債務であると解することができるそうすると,本件各基本契約は,同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,上記過払金を,弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより,弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。原審の前記判断は,これと同旨をいうものとして,是認することができる。論旨は採用することができない。
なお,上告人は,取引履歴の開示拒絶の不法行為に基づく慰謝料請求の敗訴部分につき上告受理の申立てをしたが,その理由を記載した書面を提出しないから,同部分に関する上告は却下することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官甲斐中辰夫 裁判官横尾和子 裁判官泉徳治 裁判官才口千晴 裁判官涌井紀夫)

 

 

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最高裁平成19年7月19日第一小法廷判決・民集第61巻5号2175頁(対エイワ)

2016-09-29

主文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山田有宏ほかの上告受理申立て理由第1について

1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

(1) 上告人は,貸金業の規制等に関する法律3条所定の登録を受けて貸金業を営む貸金業者である。

(2) 上告人は,昭和61年ころから平成16年4月5日までの間,Aに対して金銭を貸し付け,Aから返済を受けるということを繰り返していた。両者の間の平成5年10月25日以降の貸付け(以下「本件各貸付け」という。)及び返済の状況は,第1審判決別紙3のとおりである。本件各貸付けにおいては,元本及び利息制限法1条1項所定の制限利率を超える利率の利息を指定された回数に応じて毎月同額を分割して返済する方法(いわゆる元利均等分割返済方式)によって返済する旨の約定が付されていた。

(3) 本件各貸付けは,平成15年7月17日の貸付けを除き,いずれも借換えであり,従前の貸付けの約定の返済期間の途中において,従前の貸付金残額と追加貸付金額の合計額を新たな貸付金額とする旨合意した上で,上告人がAに対し新たな貸付金額から従前の貸付金残額を控除した額の金員(追加貸付金)を交付し,それによって従前の貸付金残金がすべて返済されたものとして取り扱うというものであった。上記借換えの際には,書類上は,別個の貸付けとして借入申込書,契約書,領収書等が作成されているが,いずれの際も,Aが上告人の店頭に出向き,即時書面審査の上,上記のとおり追加貸付金が交付されていた。上告人は,Aに対し,約定どおりの分割返済が6回程度行われると借換えを勧めていた。

(4) Aは,平成15年4月2日に,いったん,それ以前の借入れに係る債務を完済するための返済をしたが,その約3か月後である同年7月17日には,従前の貸付けと同様の方法と貸付条件で貸付けがされ,平成16年1月6日,従前の貸付けと同様の借換えがされ,その後同年4月5日まで元本及び利息の分割返済が重ねられた。

(5) Aは平成16年7月28日に破産宣告を受け,被上告人が破産管財人に選任された。

2 本件は,被上告人が,上告人に対し,Aが破産宣告前に上告人との間の金銭消費貸借契約に基づいてした弁済につき,利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金が発生しているとして,不当利得返還請求権に基づき過払金の返還等を求める事案である。
原審は,本件各貸付けは1個の連続した貸付取引であり,その元利充当計算は各取引を一連のものとして通算してすべきであって,Aが支払った制限超過部分が元本に充当された結果過払金が発生し,その後に新たな貸付けに係る債務が発生した場合であっても,当該過払金は新たな貸付けに係る債務に充当されるものと解すべきであると判断して,被上告人の上告人に対する不当利得返還請求を一部認容した。
所論は,過払金の充当に関する原審の上記判断の法令違反をいうものである。

3 前記事実関係によれば,本件各貸付けは,平成15年7月17日の貸付けを除き,従前の貸付けの切替え及び貸増しとして,長年にわたり同様の方法で反復継続して行われていたものであり,同日の貸付けも,前回の返済から期間的に接着し,前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであるというのであるから,本件各貸付けを1個の連続した貸付取引であるとした原審の認定判断は相当である。
そして,本件各貸付けのような1個の連続した貸付取引においては,当事者は,一つの貸付けを行う際に,切替え及び貸増しのための次の貸付けを行うことを想定しているのであり,複数の権利関係が発生するような事態が生ずることを望まないのが通常であることに照らしても,制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが合理的である
上記のように,本件各貸付けが1個の連続した貸付取引である以上,本件各貸付けに係る上告人とAとの間の金銭消費貸借契約も,本件各貸付けに基づく借入金債務について制限超過部分を元本に充当し過払金が発生した場合には,当該過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。
原審の前記判断は,これと同旨をいうものとして,是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官横尾和子 裁判官甲斐中辰夫 裁判官泉徳治 裁判官才口千晴)

 

 

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最高裁平成17年12月15日第一小法廷判決・民集第59巻10号2899頁(対トモエコーポレーション)

2016-09-28

主    文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理    由

上告人の上告受理申立て理由第一について

1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

(1) 上告人は,貸金業の規制等に関する法律(以下「法」という。)3条所定の登録を受けた貸金業者である。

(2) 上告人は,平成3年4月13日,被上告人との間で,次の内容の金銭消費貸借基本契約を締結し,その契約書を被上告人に交付した(以下,この契約を「本件基本契約」といい,この契約書を「本件基本契約書」という。)。
ア 借入限度額 20万円
借主は,借入限度額の範囲内であれば繰り返し借入れをすることができる。
イ 借入利率 年43.8%
ウ 返済方法 毎月15日限り元金1万5000円以上と支払日までの経過利息
を支払う。

(3) 上告人は,平成3年4月13日から平成14年5月20日までの間,被上告人に対し,本件基本契約に基づき,第1審判決別紙計算書の「年月日」欄記載の日に,「借入額」欄記載のとおり金銭を貸し付け(以下,これらの貸付けを併せて「本件各貸付け」という。),被上告人から,同計算書の「年月日」欄記載の日に,「返済額」欄記載のとおり弁済を受けた(以下,これらの弁済を併せて「本件各弁済」という。)。

(4) 上告人は,本件各貸付けの都度,被上告人に対し,営業店の窓口における貸付けの場合には「領収書兼取引確認書」又は「残高確認書」と題する書面を,現金自動入出機(ATM)を利用した貸付けの場合には「領収書兼ご利用明細」と題する書面(以下,この書面と上記「領収書兼取引確認書」又は「残高確認書」と題する書面を併せて「本件各確認書等」という。)を,それぞれ交付した。

(5) 本件基本契約書と本件各確認書等のいずれにも,法17条1項6号に掲げる「返済期間及び返済回数」や貸金業の規制等に関する法律施行規則(昭和58年大蔵省令第40号。以下「施行規則」という。)13条1項1号チに掲げる各回の「返済金額」の記載はない。

2 本件は,被上告人が,上告人に対し,本件各弁済の弁済金のうち,利息制限法所定の制限利率により計算した金額を超えて支払った部分を元本に充当すると過払金を生じていると主張して,不当利得返還請求権に基づいて,過払金の返還等を求める事案である。
これに対し,上告人は,貸金業者は,貸付けに係る契約を締結したときは,法17条1項各号に掲げる事項についてその契約の内容を明らかにする書面(以下「17条書面」という。)を貸付けの相手方に交付しなければならないとされているところ,本件基本契約は,返済方法について返済額の決定を被上告人にゆだねる内容となっているため,上告人において法17条1項6号に掲げる「返済期間及び返済回数」や施行規則13条1項1号チに掲げる各回の「返済金額」を記載することは不可能であるから,上告人が被上告人に対して法17条1項所定のその余の事項を記載した書面を交付していれば,17条書面を交付したことになるのであって,本件各弁済は法43条1項の規定の適用要件を満たしており,同項により,利息制限法1条1項所定の制限利率により計算した金額を超えて支払った利息部分は有効な利息債務の弁済とみなされ,元本に充当されることにはならないから,過払金は生じていないと主張して,被上告人の上記主張を争っている。

3(1) 貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として,貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨,目的(法1条)等にかんがみると,法43条1項の規定の適用要件については,これを厳格に解釈すべきものであり,17条書面の交付の要件についても,厳格に解釈しなければならず,17条書面として交付された書面に法17条1項所定の事項のうちで記載されていない事項があるときは,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである(最高裁平成15年(オ)第386号,同年(受)第390号同16年2月20日第二小法廷判決・民集58巻2号475頁参照)。そして,【要旨1】仮に,当該貸付けに係る契約の性質上,法17条1項所定の事項のうち,確定的な記載が不可能な事項があったとしても,貸金業者は,その事項の記載義務を免れるものではなく,その場合には,当該事項に準じた事項を記載すべき義務があり,同義務を尽くせば,当該事項を記載したものと解すべきであって,17条書面として交付された書面に当該事項に準じた事項の記載がないときは,17条書面の交付があったとは認められず,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。

(2) 前記事実関係によれば,本件各貸付けは,本件基本契約に基づいて行われたものであるが,本件基本契約の内容は,① 被上告人は,借入限度額の範囲内であれば繰り返し借入れをすることができる,② 被上告人は,元金について,返済すべき金額の最低額(以下「最低返済額」という。)を超える金額であれば,返済額を自由に決めることができる,というものであることが明らかである。
すなわち,本件各貸付けは,本件基本契約の下で,借入限度額の範囲内で借入れと返済を繰り返すことを予定して行われたものであり,その返済の方式は,追加貸付けがあっても,当該追加貸付けについての分割払の約束がされるわけではなく,当該追加貸付けを含めたその時点での本件基本契約に基づく全貸付けの残元利金(以下,単に「残元利金」という。)について,毎月15日の返済期日に最低返済額及び経過利息を支払えば足りるとするものであり,いわゆるリボルビング方式の一つである。したがって,個々の貸付けについての「返済期間及び返済回数」や各回の「返済金額」(以下,「返済期間及び返済回数」と各回の「返済金額」を併せて「返済期間,返済金額等」という。)は定められないし,残元利金についての返済期間,返済金額等は,被上告人が,今後,追加借入れをするかどうか,毎月15日の返済期日に幾ら返済するかによって変動することになり,上告人が,個々の貸付けの際に,当該貸付けやその時点での残元利金について,確定的な返済期間,返済 金額等を17条書面に記載して被上告人に交付することは不可能であったといわざるを得ない。

(3) しかし,【要旨2】本件各貸付けについて,確定的な返済期間,返済金額等を17条書面に記載することが不可能であるからといって,上告人は,返済期間,返済金額等を17条書面に記載すべき義務を免れるものではなく,個々の貸付けの時点での残元利金について,最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等を17条書面に記載することは可能であるから,上告人は,これを確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずるものとして,17条書面として交付する書面に記載すべき義務があったというべきである。そして,17条書面に最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等の記載があれば,借主は,個々の借入れの都度,今後,追加借入れをしないで,最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済していった場合,いつ残元利金が完済になるのかを把握することができ,完済までの期間の長さ等によって,自己の負担している債務の重さを認識し,漫然と借入れを繰り返すことを避けることができるものと解され,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準じた効果があるということができる。
前記事実関係によれば,本件基本契約書の記載と本件各確認書等の記載とを併せても,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載があると解することはできない。したがって,本件各貸付けについては,17条書面の交付があったとは認められず,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。

4 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は,採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島田仁郎 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉 徳治 裁判官 才口千晴)

 
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最高裁平成21年9月11日第二小法廷判決・集民第231号531頁

2016-09-27

主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理由
上告代理人矢野仁士の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

1 本件は,被上告人が,上告人に対し,上告人との間の金銭消費貸借契約に基づいてした弁済につき,利息制限法所定の制限利率を超えて支払った利息を元本に充当すると過払金が発生しているとして,不当利得返還請求権に基づき過払金の返還等を求める事案である。上告人において,期限の利益喪失特約に基づき被上告人が期限の利益を喪失したと主張することが,信義則に反するか等が争われている。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 上告人は,貸金業法(平成18年法律第115号による改正前の法律の題名は貸金業の規制等に関する法律)3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2) 上告人は,平成11年9月28日,被上告人に対し,400万円を次の約定で貸し付けた(以下,この貸付けに係る契約を「本件契約」という。)。
ア弁済方法平成11年10月から平成16年9月まで毎月15日限り,元本6万6000円ずつ(ただし,平成16年9月のみ10万6000円)を支払日の前日までの利息と共に支払う(以下,この毎月返済することが予定された元本を「賦払金」といい,残元本に対する支払日の前日までの利息を「経過利息」という。)。
イ利息年29.8%(年365日の日割計算)
ウ遅延損害金年36.5%(年365日の日割計算)。ただし,期限の利益喪失後,上告人は毎月15日までに支払われた遅延損害金については一部を免除し,その利率を年29.8%とするが,この取扱いは,期限を猶予するものではない。
エ特約元利金の支払を怠ったときは,通知催告なくして期限の利益を失い,債務全額及び残元本に対する遅延損害金を即時に支払う。
(3)ア被上告人は,上告人に対し,原判決別紙1「元利金計算書」の「年月日」欄記載の各年月日に,「支払金額」欄記載の各金額の支払をした。
イ被上告人は,第1回目から第4回目までの各支払期日(上記(2)アで定められた支払期日をいう。以下同じ。)に,賦払金及び経過利息の合計額(上記(2)ア及びイの約定により各支払期日に支払うべきものとされていた金額。以下同じ。)又はこれを超える額を支払った。被上告人は,第5回目の支払期日である平成12年2月15日には支払をしなかったが,その前に,上告人の担当者から15万円くらい支払っておけばよいと言われていたため,同月16日に15万円を支払った。上告人は,被上告人から受領した15万円のうち9万1450円を利息に充当し,5万8550円を元本に充当した旨記載された領収書兼利用明細書を被上告人に送付した。
ウ被上告人は,第6回目から第8回目までの各支払期日に賦払金及び経過利息の合計額又はこれを超える額の金員を支払ったが,第9回目の支払期日である平成12年6月15日の支払が困難なので,上告人の担当者に電話をかけ,支払が翌日になる旨告げたところ,同担当者からは,1日分の金利を余計に支払うことを求められ,翌日支払う場合の支払金額として賦払金と年29.8%の割合で計算した金利との合計額を告げられた。そこで,被上告人は,同担当者が告げた金額よりも多めに支払っておけば問題はないと考え,同月16日,上告人に対し15万8000円を支払った。
エ上告人は,第6回目の支払期日以降,被上告人の支払が支払期日より遅れた場合,支払われた金員を,残元本全額に対する前回の支払日から支払期日までの年29.8%の割合で計算した遅延損害金及び残元本全額に対する支払期日の翌日から支払日の前日までの年36.5%の割合で計算した遅延損害金に充当し,残余があるときは,残元本の一部に充当した。
被上告人は,その後,支払期日に遅れて支払うことがしばしばあったが,上告人は,被上告人に対して残元本全額及びこれに対する遅延損害金の一括弁済を求めることはなかった。
オ被上告人は,上告人の上記のような対応から,当初の約定の支払期日より支払が多少遅れることがあっても,遅れた分の遅延損害金を支払えば期限の利益を失うことはないと信じ,期限の利益を喪失したために残元本全額を一括弁済すべき義務が発生しているとは思わなかった。
上告人は,第6回目の支払期日以降,弁済を受けるたびに,その弁済金を残元本全額に対する遅延損害金と残元本の一部に充当したように記載した領収書兼利用明細書(以下「本件領収書兼利用明細書」という。)を被上告人に送付していた。しかし,被上告人は,上告人が上記のような対応をしたために,期限の利益を喪失していないものと誤信して支払を続け,上告人は,被上告人が上記のように誤信していることを知りながら,被上告人に対し,残元本全額について弁済期が到来していることについて注意を喚起することはなく,被上告人の上記誤信をそのまま放置した。そして,被上告人は,平成18年2月17日まで,賦払金と年29.8%の割合による金員との合計額につき,賦払金と経過利息の支払と誤信して,その支払を続け,途中で,当初の約定の支払期日より支払を遅れた場合には,これに付加して,遅れた日数分のみ年36.5%の割合で計算した遅延損害金を支払った。
3(1) 前記事実関係によれば,本件契約には,遅延損害金の利率を年36.5%とした上で,期限の利益喪失後,毎月15日までに支払われた遅延損害金については,その利率を利息の利率と同じ年29.8%とするという約定があるというのであり,このような約定の下では,借主が期限の利益を喪失しても,支払期日までに支払をする限りにおいては期限の利益喪失前と支払金額に差異がなく,支払期日を経過して年36.5%の割合による遅延損害金を付加して支払うことがあっても,その後の支払において支払期日までに支払えば期限の利益喪失前と同じ支払金額に戻るのであるから,借主としては,上告人の対応によっては,期限の利益を喪失したことを認識しないまま支払を継続する可能性が多分にあるというべきである。
(2) そして,前記事実関係によれば,上告人は,被上告人が第5回目の支払期日における支払を遅滞したことによって期限の利益を喪失した後も,約6年間にわたり,残元本全額及びこれに対する遅延損害金の一括弁済を求めることなく,被上告人から弁済金を受領し続けてきたというだけでなく,① 被上告人は,第5回目の支払期日の前に上告人の担当者から15万円くらい支払っておけばよいと言われていたため,上記支払期日の翌日に15万円を支払ったものであり,しかも,②被上告人が上記のとおり15万円を支払ったのに対し,上告人から送付された領収書兼利用明細書には,この15万円を利息及び元本の一部に充当したことのみが記載されていて,被上告人が上記支払期日における支払を遅滞したことによって発生したはずの1日分の遅延損害金に充当した旨の記載はなく,③ 被上告人が,第9回目の支払期日に,上告人の担当者に対して支払が翌日になる旨告げた際,同担当者からは,1日分の金利を余計に支払うことを求められ,翌日支払う場合の支払金額として賦払金と年29.8%の割合で計算した金利との合計額を告げられたというのである。
(3) 上記(2)のような上告人の対応は,第5回目の支払期日の前の上告人の担当者の言動,同支払期日の翌日の支払に係る領収書兼利用明細書の記載,第9回目の支払期日における上告人の担当者の対応をも考慮すれば,たとえ第6回目の支払期日以降の弁済について被上告人が上告人から本件領収書兼利用明細書の送付を受けていたとしても,被上告人に期限の利益を喪失していないとの誤信を生じさせかねないものであって,被上告人において,約定の支払期日より支払が遅れることがあっても期限の利益を喪失することはないと誤信したことには無理からぬものがあるというべきである。
(4) そして,上告人は,被上告人が期限の利益を喪失していないと誤信していることを知りながら,この誤信を解くことなく,第5回目の支払期日の翌日以降約6年にわたり,被上告人が経過利息と誤信して支払った利息制限法所定の利息の制限利率を超える年29.8%の割合による金員等を受領し続けたにもかかわらず,被上告人から過払金の返還を求められるや,被上告人は第5回目の支払期日における支払が遅れたことにより既に期限の利益を喪失しており,その後に発生したのはすべて利息ではなく遅延損害金であったから,利息の制限利率ではなく遅延損害金の制限利率によって過払金の元本への充当計算をすべきであると主張するものであって,このような上告人の期限の利益喪失の主張は,誤信を招くような上告人の対応のために,期限の利益を喪失していないものと信じて支払を継続してきた被上告人の信頼を裏切るものであり,信義則に反し許されないものというべきである。
これと同旨の原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官中川了滋裁判官今井功裁判官古田佑紀裁判官竹内行夫)

 

 

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最高裁平成23年9月30日第二小法廷判決・集民第237号655頁

2016-09-26

主 文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人小林弘卓ほかの上告受理申立て理由第2について

1 本件は,上告人が,いずれも貸金業者である株式会社A(同社が合併により権利義務を承継した会社を含む。以下同じ。現商号株式会社B)及びその完全親会社である被上告人との間の継続的な金銭消費貸借取引に係る各弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の制限を超えて利息として支払った部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金が発生していると主張して,被上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,その返還等を求める事案である。上告人は,Aとの間の取引によって生じた過払金の返還に係る債務についても被上告人がこれを引き受けたなどと主張するのに対し,被上告人は,これを争っている。

2 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

(1) 上告人は,Aとの間で,金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結し,これに基づき,平成5年7月6日から平成19年8月1日までの間,第1審判決別紙計算書1-①の番号1から103までの「借入金額」欄及び「弁済額」欄記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引を行った(以下,この取引を「本件取引1」という。)。本件取引1につき,制限超過部分を元本に充当すると,同日時点で過払金が発生していた。
(2) 被上告人は,グループ会社のうち,国内の消費者金融子会社の再編を目的として,平成19年6月18日,被上告人の完全子会社であったA外1社との間で上記再編に係る基本合意書を取り交わし,Aが顧客に対して有する貸金債権を被上告人に移行し,Aの貸金業を廃止することとした。
(3) 上記(2)の債権移行を実行するため,被上告人は,Aとの間で,平成19年6月18日,要旨次のとおりの業務提携契約(以下「本件業務提携契約」という。)を締結した。
ア Aの顧客のうち被上告人に債権を移行させることを勧誘する顧客は,被上告人及びAの協議により定めるものとし,そのうち希望する顧客との間で,被上告人が金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結する(以下,被上告人との間で上記基本契約を締結したAの顧客を「切替顧客」という。)。
イ Aが切替顧客に対して負担する利息返還債務,同債務に附帯して発生する経過利息の支払債務その他同社が切替顧客に対して負担する一切の債務(以下「過払金等返還債務」という。)について,被上告人及びAが連帯してその責めを負うものとし,この連帯債務の負担部分の割合は,被上告人が0割,Aが10割とする(以下,この定めを「本件債務引受条項」という。)。
ウ 被上告人及びAは,切替顧客に対し,今後の全ての紛争に関する申出窓口を被上告人とする旨を告知する(以下,この定めを「本件周知条項」という。)。被上告人は,切替顧客からの過払金等返還債務の請求に対しては,申出窓口の管理者として善良なる注意をもって対応する。
(4) 上告人は,本件取引1に係るAの債権の移行を求める被上告人の勧誘に応じて,平成19年8月1日,被上告人との間で金銭消費貸借取引に係る基本契約(以下「本件切替契約」という。)を締結した。この際,上告人は,被上告人から,被上告人グループの再編により,Aに対して負担する債務を被上告人からの借入れにより完済する切替えについて承諾すること,本件取引1に係る約定利息を前提とする残債務(以下「約定残債務」という。)が48万5676円であることを確認し,これを完済するため,同額をA名義の口座に振り込むことを被上告人に依頼すること,本件取引1に係る紛争等の窓口が今後被上告人となることに異議はないことなどが記載された「残高確認書兼振込代行申込書」(以下「本件申込書」という。)を示され,これに署名して被上告人に差し入れた。
(5) 本件申込書の差入れを受け,被上告人は,平成19年8月1日,上告人に対し,本件切替契約に基づき,本件取引1に係る約定残債務金額に相当する48万5676円を貸し付けた上,同額をA名義の口座に振込送金した(第1審判決別紙計算書1-①の番号104及び105の取引に当たる。)。そして,上告人は,被上告人に対し,同年9月2日から平成21年2月14日までの間,同計算書の番号106から123までの「弁済額」欄記載のとおりの弁済をした(以下,この弁済に係る取引を「本件取引2」という。)。
(6) 被上告人とAは,平成20年12月15日,本件業務提携契約のうち本件債務引受条項を変更し,過払金等返還債務につき,Aのみが負担し,被上告人は切替顧客に対し何らの債務及び責任を負わないことを内容とする契約(以下「本件変更契約」という。)を締結した。

3 原審は,上記事実関係の下において,被上告人が,Aの負担する過払金等返還債務を引き受けた上で,上告人との間で,本件取引1と一連のものとして本件取引2を行った旨の主張につき,次のとおり判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。
本件債務引受条項は第三者のためにする契約の性質を有するところ,上告人が,被上告人に対し,本件取引1に係る紛争等の窓口が今後被上告人となることに異議はないなどの記載がされた本件申込書を差し入れ,被上告人との間で本件切替契約を締結した上,以後,被上告人に弁済をしたからといって,本件債務引受条項につき,上告人が受益の意思表示をしたものとはいえないから,本件取引1に係る過払金等返還債務を被上告人が引き受けたということはできない。そして,本件取引2は,被上告人からの借入金に対する弁済であって,制限超過部分を元本に充当しても過払金は生じない。

4 しかし,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
前記事実関係によれば,被上告人は,グループ会社のうち国内の消費者金融子会社の再編を目的として,被上告人の完全子会社であるAの貸金業を廃止し,これを被上告人に移行,集約するために本件業務提携契約を締結したのであって,上記の貸金業の移行,集約を実現し,円滑に進めるために,本件債務引受条項において,被上告人がAの顧客に対する過払金等返還債務を併存的に引き受けることが,また,本件周知条項において,Aの顧客である切替顧客に対し,当該切替顧客とAとの間の債権債務に関する紛争については,単に紛争の申出窓口になるにとどまらず,その処理についても被上告人が全て引き受けることとし,その旨を周知することが,それぞれ定められたものと解される。被上告人は,上記のような本件業務提携契約を前提として,Aの顧客であった上告人に対し,本件切替契約が被上告人のグループ会社の再編に伴うものであることや,本件取引1に係る紛争等の窓口が今後被上告人になることなどが記載された本件申込書を示して,被上告人との間で本件切替契約を締結することを勧誘しているのであるから,被上告人の意図は別にして,上記勧誘に当たって表示された被上告人の意思としては,これを合理的に解釈すれば,上告人が上記勧誘に応じた場合には,被上告人が,上告人とAとの間で生じた債権を全て承継し,債務を全て引き受けることをその内容とするものとみるのが相当である。
そして,上告人は,上記の意思を表示した被上告人の勧誘に応じ,本件申込書に署名して被上告人に差し入れているのであるから,上告人もまた,Aとの間で生じた債権債務を被上告人が全てそのまま承継し,又は引き受けることを前提に,上記勧誘に応じ,本件切替契約を締結したものと解するのが合理的である。
本件申込書には,Aに対して負担する債務を被上告人からの借入れにより完済する切替えについて承諾すること,本件取引1に係る約定残債務の額を確認し,これを完済するため,同額をA名義の口座に振り込むことを依頼することも記載されているが,本件申込書は,上記勧誘に応じて差し入れられたものであり,実際にも,上告人が被上告人から借入金を受領して,これをもって自らAに返済するという手続が執られることはなく,被上告人とその完全子会社であるAとの間で直接送金手続が行われたにすぎない上に,上記の記載を本件申込書の他の記載部分と対照してみるならば,上告人は,本件取引1に基づく約定残債務に係るAの債権を被上告人に承継させるための形式的な会計処理として,Aに対する約定残債務相当額を被上告人から借り入れ,その借入金をもって上記約定残債務相当額を弁済するという処理を行うことを承諾したにすぎないものと解される。
以上の事情に照らせば,上告人と被上告人とは,本件切替契約の締結に当たり,被上告人が,上告人との関係において,本件取引1に係る債権を承継するにとどまらず,債務についても全て引き受ける旨を合意したと解するのが相当であり,この債務には,過払金等返還債務も含まれていると解される。したがって,上告人が上記合意をしたことにより,論旨が指摘するような第三者のためにする契約の性質を有する本件債務引受条項について受益の意思表示もされていると解することができる。そして,被上告人が上告人と上記のとおり合意した以上,その後,被上告人とAとの間において本件変更契約が締結されたからといって,上記合意の効力が左右される余地はなく,また,上告人が,本件取引1に基づく約定残債務相当額を被上告人から借り入れ,その借入金をもって本件取引1に基づく約定残債務を完済するという会計処理は,Aから被上告人に対する貸金債権の承継を行うための形式的な会計処理にとどまるものというべきであるから,本件取引1と本件取引2とは一連のものとして過払金の額を計算すべきであることは明らかである。
したがって,被上告人は,上告人に対し,本件取引1と本件取引2とを一連のものとして制限超過部分を元本に充当した結果生ずる過払金につき,その返還に係る債務を負うというべきである。

5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,この趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,過払金の額等につき更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官千葉勝美裁判官古田佑紀裁判官竹内行夫裁判官須藤正彦)

 

 

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最高裁平成21年4月14日第三小法廷判決・ 集民第230号353頁

2016-09-25

主文
原判決中,上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理由
上告代理人平光哲弥,同板谷淳一の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
1 本件本訴は,貸金業者である上告人が,借主である被上告人Y1及びその連帯保証人である被上告人Y2に対して貸金の返済を求めるものであり,本件反訴は,被上告人Y1が,弁済によって過払金が生じているとして,上告人に対してその返還を求めるものである。被上告人Y1が上記貸金の返済義務について期限の利益を喪失したか否か等が争われている。

2 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 上告人は,貸金業法(平成18年法律第115号による改正前の法律の題名は貸金業の規制等に関する法律。以下,同改正の前後を通じて「貸金業法」という。)3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2) 上告人は,平成11年6月11日,被上告人Y1に対し,480万円を次の約定で貸し付けた(以下「本件貸付け」という。)。
ア利息年29.8%(年365日の日割計算)
イ遅延損害金年36.5%(年365日の日割計算)
ウ弁済方法平成11年7月から平成16年6月まで毎月5日限り,元金8万円ずつを経過利息と共に支払う。
エ特約元利金の支払を怠ったときは,通知催告なくして期限の利益を失い,債務全額及び残元本に対する遅延損害金を即時に支払う(以下「本件特約」という。)。
(3) 被上告人Y2は,平成11年6月11日,上告人に対し,本件貸付けに係る被上告人Y1の債務について連帯保証した。
(4) 被上告人Y1は,上告人に対し,本件貸付けに係る債務の弁済として,第1審判決別紙利息制限法再計算シート(以下「本件計算書」という。)の「年月日」欄記載の各年月日に,「弁済額」欄記載の各金額を支払った。被上告人Y1は,約定の支払期日である平成13年1月5日に元利金の支払をしなかったところ,上告人は,同日経過後も,被上告人Y1に対し,残元利金の一括弁済を求めなかった。
(5) 上告人は,被上告人Y1から各弁済を受けた日の翌営業日に,被上告人Y1に対し,弁済金の受領年月日,受領金額,充当額,残債務額等が記載された領収書兼利用明細書を郵送した。

3 上告人は,①被上告人Y1は,平成13年1月5日に支払うべき元利金の支払を怠り,期限の利益を喪失した,②本件貸付けに係る債務の各弁済には,貸金業法43条1項又は3項の規定(平成18年法律第115号による改正前のもの。以下同じ。)が適用されるから,利息制限法1条1項又は同法4条1項(平成11年法律第155号による改正前のもの)に定める利息又は賠償額の予定の制限額を超える部分の支払も有効な債務の弁済とみなされるなどと主張して,被上告人らに対し,本件貸付けの残元本205万6984円及び遅延損害金の支払を求めている(本訴請求)。
これに対して,被上告人Y1は,上告人は被上告人Y1に対して上記期限の利益の喪失を宥恕し,再度期限の利益を与えたから,遅延損害金は発生しておらず,また,上告人において期限の利益の喪失を主張することは,信義則に違反し,権利の濫用として許されないなどと主張して,本件計算書記載のとおり,本件貸付けに係る各弁済金のうち同法1条1項所定の利息の制限額を超えて支払われた部分を元本に充当して計算し,上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金102万3740円及び民法704条前段所定の利息の支払を求めている(反訴請求)。なお,被上告人らは,上告人が取引履歴を開示することなく本訴を提起したことは不法行為に当たると主張して,上告人に対して損害賠償金を反訴請求していたが,これを棄却すべきものとした原判決に対し,不服を申し立てなかった。

4 原審は,前記事実関係の下において,次のとおり判断して,上告人の本訴請求を全部棄却すべきものとし,被上告人Y1の反訴請求のうち過払金返還請求を全部認容するとともに,民法704条前段所定の利息の請求を一部認容すべきものとした。
(1) 本件貸付けに係る債務の各弁済については,貸金業法43条1項の規定は適用されない。
(2) 被上告人Y1は,約定の支払期日である平成13年1月5日に元利金を一切支払わなかったので,本件特約により,同日の経過をもって期限の利益を喪失した。
(3) しかし,上告人は,その後も,被上告人Y1に対し,残元利金の一括支払を請求しておらず,本件計算書記載のとおり,被上告人Y1から,3年以上にわたり,回数にして100回,金額にして合計368万4466円の弁済を受けている。これを利息制限法1条1項所定の利率による利息及び元本に順次充当していくと,約定の最終弁済期より1年半以上前の平成14年10月には元本が完済され,以後過払金が発生していくことになる。そして,上告人は,元本完済後も約1年半にわたって被上告人Y からの弁済を1 受け続けていることになる。これらの事情を総合して考慮すると,上告人は,被上告人Y1に対し,平成13年1月5日の支払期日を経過したことによる期限の利益の喪失を宥恕し,再度期限の利益を与えたものと解するのが相当である。
(4) 本件貸付けに係る債務の弁済金につき充当計算を行うに当たっては,上記期限の利益の喪失後も,利息制限法1条1項所定の利率により充当計算すべきところ,これによれば,本件計算書記載のとおり,過払金の額は合計102万3740円になる。

5 しかしながら,原審の上記4(1)及び(2)の判断は是認することができるが,同(3)及び(4)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。記録によれば,上告人は,上記期限の利益の喪失後は,本件貸付けに係る債務の弁済を受けるたびに,受領した金員を「利息」ではなく「損害金」へ充当した旨記載した領収書兼利用明細書を交付していたから,上告人に期限の利益の喪失を宥恕し,再度期限の利益を付与する意思はなかったと主張していること(以下,この主張を「上告人の反対主張」という。),上告人は,これに沿う証拠として,上記期限の利益の喪失後に受領した金員の充当内容が記載された領収書兼利用明細書と題する書面を多数提出していること,これらの書面のうち,平成13年1月9日付けの書面及び受領金額が2737円と記載された同年2月6日付けの書面には,受領した金員を上記期限の利益を喪失した日までに発生した利息に充当した旨の記載がされているが,受領金額が8万6883円と記載された同日付けの書面及びこれより後の日付の各書面には,受領した金員を上記期限の利益を喪失した日の翌日以降に発生した損害金又は残元本に充当した旨の記載がされていること,この記載は,残元本全額に対する遅延損害金が発生していることを前提としたものであることが明らかである。
上告人が,上記期限の利益の喪失後は,被上告人Y1に対し,上記のような,期限の利益を喪失したことを前提とする記載がされた書面を交付していたとすれば,上告人が別途同書面の記載内容とは異なる内容の請求をしていたなどの特段の事情のない限り,上告人が同書面の記載内容と矛盾する宥恕や期限の利益の再度付与の意思表示をしたとは認められないというべきである。そして,上告人が残元利金の一括支払を請求していないなどの原審が指摘する上記4(3)の事情は,上記特段の事情に当たるものではない。
しかるに,原審は,上告人の反対主張について審理することなく,上告人が被上告人Y1に対し,上記期限の利益の喪失を宥恕し,再度期限の利益を付与したと判断しているのであるから,この原審の判断には,審理不尽の結果,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。この点に関する論旨は,上記の趣旨をいうものとして理由があり,原判決中,上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,上記の点等について更に審理を尽くさせるため,同部分につき,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官藤田宙靖 裁判官堀籠幸男 裁判官那須弘平 裁判官田原睦夫 裁判官近藤崇晴)

 

 

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最高裁平成20年1月18日第二小法廷判決・民集第62巻1号28頁(対クオークローン(クラヴィス))

2016-09-24

主文

原判決中,主文第1項及び第2項を破棄する。
前項の部分につき,本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人太田三夫の上告受理申立て理由について

1 本件は,上告人を貸主,被上告人を借主としていわゆるリボルビング方式の金銭消費貸借に係る二つの基本契約が締結され,各基本契約に基づいて取引が行われたところ,被上告人が,上記取引を一連のものとみて,これに係る各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金(不当利得)が生じていると主張して,上告人に対し過払金の返還を請求する事案である。最初に締結された基本契約に基づく取引について生じた過払金をその後に締結された基本契約に基づく取引に係る債務に充当することができるかどうかが争われている。

2 原審が確定した事実関係の概要は次のとおりである。
(1)上告人は,貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号により法律の題名が貸金業法と改められた。)3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2)被上告人は,上告人との間で,平成2年9月3日,次の約定により,継続的に金銭の借入れとその弁済が繰り返されるリボルビング式金銭消費貸借に係る基本契約(以下「基本契約1」という。)を締結した。
ア 融資限度額 50万円(被上告人はこの範囲で自由に借増しができる。)
イ 利息 年29.2%
ウ 遅延損害金 年36.5%
エ 返済日 毎月1日
オ 返 済 方 法 借入時の借入残高に応じた一定額以上を毎月弁済日までに支払う。
(3)被上告人は,平成2年9月3日から平成7年7月19日までの間,第1審判決別紙法定金利計算書1の番号1から74までの年月日欄記載の日に借入金額欄又は弁済額欄記載のとおり金銭の借入れと弁済を行った。これにより,基本契約1の約定利率による利息及び元金は,平成7年7月19日に完済された計算となる。なお,この間の弁済につき,制限超過部分を元本に充当されたものとして計算をした残元金は,上記法定金利計算書1の番号1から74までの残元金欄記載のとおりであって,平成7年7月19日の時点における過払金は42万9657円となる。
(4)被上告人は,上告人との間で,平成10年6月8日,次の約定により,継続的に金銭の借入れとその弁済が繰り返されるリボルビング式金銭消費貸借に係る基本契約(以下「基本契約2」という。)を締結した。
ア 融資限度額 50万円(被上告人はこの範囲で自由に借増しができる。)
イ 利息 年29.95%
ウ 遅延損害金 年39.5%
エ 返済日 毎月27日
オ 返 済 方 法 借入時の借入残高に応じた一定額以上を毎月弁済日までに支払う。
(5)被上告人は,平成10年6月8日から平成17年7月7日までの間,第1審判決別紙法定金利計算書2の番号1から146までの年月日欄記載の日に借入金額欄又は弁済額欄記載のとおり金銭の借入れと弁済を行った。
(6)上告人は,基本契約2の契約書の作成に際し,被上告人から,借入申込書の提出を受け,健康保険証のコピーなどを徴求した上,被上告人の勤務先に電話して在籍の確認をした。
上記契約書作成に際しての審査項目のうち,被上告人の融資希望額,勤務先,雇用形態,給与の支給形態,業種及び職種,住居の種類並びに家族の構成は,基本契約1を締結したときのものと同一であり,年収額及び他に利用中のローンの件数,金額についても大差はない状況であった。また,基本契約2を取り扱った上告人の支店は基本契約1を取り扱った支店と同一であった。

3 原審は,次のとおり判示して,第1審判決中,被上告人の過払金返還請求のうちの一部を棄却した部分を取り消し,上告人に対し,第1審の認容額である28万7552円及びうち27万2973円に対する平成17年11月19日から支払済みまで年5分の割合による金員に加えて,43万8157円及びうち41万4829円に対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を命じた。
(1)同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返される金銭消費貸借契約においては,借主は,借入総額の減少を望み,複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常であると考えられるから,仮にいったん約定利息に基づく元利金が完済され,その後新たな借入れがされた場合でも,少なくともそれらの取引が一連のものであり,実質上一個のものとして観念されるときは,利息制限法違反により生じた過払金は新たな借入金元本の弁済に当然に充当されるものと解するのが相当である。
(2)本件においては,基本契約1の完済時から基本契約2の締結時まで取引中断期間が約3年間と長期間に渡ったものの,この間に基本契約1を終了させる手続が執られた事実はないこと,基本契約2締結の際の審査手続も基本契約1が従前どおり継続されることの確認手続にすぎなかったとみることができることを考慮すると,基本契約1と基本契約2とで利率と遅延損害金の率が若干異なっており,毎月の弁済期日が異なっているとしても,基本契約1及び基本契約2は,借増しと弁済が繰り返される一連の貸借取引を定めたものであり,実質上一体として1個のリボルビング方式の金銭消費貸借契約を成すと解するのが相当であるから,基本契約1につき平成7年7月19日の弁済時に生じた過払金42万9657円は,その後平成10年6月8日に50万円の貸付けがされた時点で,何らの意思表示をすることなく同貸付金債務に当然に充当される(したがって,基本契約1の取引により生じた過払金について,上告人の主張に係る消滅時効は成立しない。)。これにより,平成10年6月8日から平成17年7月7日までの借入れ及び弁済について,制限超過部分を元本に充当されたものとして計算をすると,法定金利計算書1の番号75から220までに記載のとおり,平成17年7月7日の時点において過払金元金68万7802円が,同年11月18日までに過払金利息3万7907円がそれぞれ発生している。
これに対し,第1審判決は,平成7年7月19日に生じた過払金42万9657円は平成10年6月8日の貸付金債務に充当されないとする判断を前提として被上告人の請求を一部認容しているが,その判断は誤りであるから,第1審の認容額に加えて上記のとおりの金員の支払を命ずる。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,過払金が発生することとなった弁済がされた時点においては両者の間に他の債務が存在せず,その後に,両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は,第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である(最高裁平成18年(受)第1187号同19年2月13日第三小法廷判決・民集61巻1号182頁,最高裁平成18年(受)第1887号同19年6月7日第一小法廷判決・民集61巻4号1537頁参照)。そして,第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,第1の基本契約についての契約書の返還の有無,借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無,第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況,第2の基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解するのが相当である。
(2)これを本件についてみると,前記事実関係によれば,基本契約1に基づく取引について,約定利率に基づく計算上は元利金が完済される結果となった平成7年7月19日の時点において,各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金42万9657円が発生したが,その当時上告人と被上告人との間には他の借入金債務は存在せず,その後約3年を経過した平成10年6月8日になって改めて基本契約2が締結され,それ以降は基本契約2に基づく取引が行われたというのであるから,基本契約1に基づく取引と基本契約2に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合に当たるなど特段の事情のない限り,基本契約1に基づく取引により生じた過払金は,基本契約2に基づく取引に係る債務には充当されないというべきである。
原審は,基本契約1と基本契約2は,単に借増しと弁済が繰り返される一連の貸借取引を定めたものであり,実質上一体として1個のリボルビング方式の金銭消費貸借契約を成すと解するのが相当であることを根拠として,基本契約1に基づく取引により生じた過払金が基本契約2に基づく取引に係る債務に当然に充当されるとする。しかし,本件においては,基本契約1に基づく最終の弁済から約3年間が経過した後に改めて基本契約2が締結されたこと,基本契約1と基本契約2は利息,遅延損害金の利率を異にすることなど前記の事実関係を前提とすれば,原審の認定した事情のみからは,上記特段の事情が存在すると解することはできない。
そうすると,本件において,上記特段の事情の有無について判断することなく,上記過払金が基本契約2に基づく取引に係る債務に当然に充当されるとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
5 以上によれば,論旨は理由があり,原判決中,主文第1項及び第2項は破棄を免れない。そこで,前記特段の事情の有無等につき更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官今井功
裁判官津野修
裁判官中川了滋
裁判官古田佑紀)

 

 

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最高裁平成24年(受)539号平成24年6月29日第二小法廷判決

2016-09-23

主 文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人二見敏夫,同栫亮太,同山田晃義の上告受理申立て理由について

1 本件は,上告人が,いずれも貸金業者である株式会社A(同社が合併により権利義務を承継した会社を含む。以下同じ。その後,株式会社B,株式会社Cと順次商号変更した。)及びその完全親会社である被上告人との間の継続的な金銭消費貸借取引における弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の制限を超えて利息として支払った部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金が発生しているとして,被上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,上記過払金の返還等を求める事案である。上告人は,Aが被上告人に対して上告人とAとの間の金銭消費貸借取引における約定利息を前提とする残債権(以下「約定残債権」という。)を譲渡したことにより,被上告人が上記金銭消費貸借取引により発生した過払金の返還に係る債務を承継したなどと主張するのに対し,被上告人は,これを争っている。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

(1)上告人は,Aとの間で,金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結し,これに基づき,平成6年4月15日から平成19年9月17日まで,第1審判決別紙「利息制限法による計算書」の番号1から266までの「借入金額」欄及び「弁済額」欄記載のとおり,継続的な金銭消費貸借取引を行った(以下,この取引を「第1取引」という。)。第1取引につき,制限超過部分を元本に充当すると,同日時点で過払金が発生していた。

(2)被上告人は,グループ会社のうち,国内の消費者金融子会社の再編を目的として,平成19年6月18日,被上告人の完全子会社であったA外1社との間で上記再編に係る基本合意書を取り交わし,Aが顧客に対して有する貸金債権を被上告人に移行し,Aの貸金業を廃止することとした。この債権移行の実行のため,被上告人は,Aとの間で,同日,業務提携契約(以下「本件業務提携契約」という。)を締結し,その中で,Aの顧客のうち被上告人への債権移行を勧誘する顧客は,被上告人及びAの協議により定めるものとし,そのうち希望する顧客との間で,被上告人が金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結することなどを定めたが,上告人は,被上告人との間で,上記基本契約を締結することはなかった。

(3)被上告人は,Aとの間で,平成19年10月16日,Aが有する貸付債権のうち,被上告人との間で上記の基本契約を締結していない顧客に係る貸付債権であって別途特定するものをAから譲り受ける旨の合意をした(以下,この合意を「本件債権譲渡基本契約」という。)。
本件債権譲渡基本契約には,Aが譲渡債権に係る顧客に対して負担する利息返還債務,同債務に附帯して発生する経過利息の支払債務その他Aが上記顧客に対して負担する一切の債務(以下「過払金等返還債務」という。)については,被上告人が併存的に引き受ける旨の条項(以下「本件債務引受条項」という。)がある。しかし,本件債権譲渡基本契約には,譲渡債権に係るAの貸主としての地位自体を被上告人に移転する旨又はAの負担する過払金等返還債務が当然に被上告人に承継される旨を定めた条項はない。

(4)被上告人は,Aとの間で,本件債権譲渡基本契約に基づき,平成19年10月17日をもって第1取引における約定残債権をAから譲り受ける旨の合意をした(以下,この合意を「本件譲渡」という。)。
被上告人から本件譲渡に係る通知を受けた上告人は,被上告人に対し,平成19年11月6日から平成20年11月2日まで,第1審判決別紙「利息制限法による計算書」の番号267から279までの「弁済額」欄記載のとおりの弁済をするとともに,同日,被上告人との間で,新たに金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結した。この基本契約は,上告人と被上告人との上記弁済に係る取引により過払金が発生していれば,当該過払金を同基本契約に基づく取引に係る借入金債務に充当する旨の合意を含むものであった。そして,上告人と被上告人とは,同基本契約に基づき,同日から平成21年2月13日まで,上記別紙の番号280から286までの「借入金額」欄及び「弁済額」欄記載のとおりの取引をした(以下,本件譲渡後の上告人と被上告人との取引を「第2取引」という。)。

(5)被上告人とAとは,平成20年12月15日,本件債権譲渡基本契約のうち本件債務引受条項を変更し,過払金等返還債務につき,Aのみが負担し,被上告人は譲渡債権に係る顧客に対し何らの債務及び責任を負わないことを内容とする契約(以下「本件変更契約」という。)を締結した。

3 原審は,上記事実関係の下において,被上告人は,本件債権譲渡基本契約及びこれに基づく本件譲渡により第1取引によって発生した過払金等返還債務を承継するものではないと判断し,上告人の請求を第2取引のみによって発生した過払金15万5000円及び民法704条前段所定の利息の支払を求める限度で認容した。

4 所論は,被上告人は,本件債権譲渡基本契約及びこれに基づく本件譲渡により,第1取引によって発生した過払金等返還債務を承継したものであり,これを否定することは信義則に反するというものである。

貸金業者(以下「譲渡業者」という。)が貸金債権を一括して他の貸金業者(以下「譲受業者」という。)に譲渡する旨の合意をした場合において,譲渡業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんによるというべきであり,借主と譲渡業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が譲受業者に当然に移転するものではなく,また,譲受業者が上記金銭消費貸借取引に係る過払金返還債務を当然に承継するものでもない(最高裁平成22年(受)第1238号,同年(オ)第1187号同23年3月22日第三小法廷判決・裁判集民事236号225頁,最高裁平成22年(受)第1405号同23年7月8日第二小法廷判決・裁判集民事237号159頁等)。前記事実関係によれば,本件譲渡は,Aから被上告人への債権譲渡について包括的に定めた本件債権譲渡基本契約に基づくものであるところ,同基本契約には,契約上の地位の移転や過払金等返還債務の当然承継を定める条項はないというのであるから,本件譲渡により,直ちに,被上告人が,第1取引に係る契約上の地位の移転を受け,又は第1取引に係る過払金等返還債務を承継したということはできない。
また,前記事実関係によれば,本件債権譲渡基本契約中の本件債務引受条項は,譲渡債権に係るAの顧客を第三者とする第三者のためにする契約の性質を有するところ,本件変更契約の締結時までに,上告人は,被上告人に対し,本件譲渡に係る通知に従い弁済をした以外には,第1取引に係る約定残債権につき特段の行為をしておらず,上記弁済をしたことをもって,本件債務引受条項に係る受益の意思表示をしたものとみる余地はない。そうすると,本件債務引受条項は,上告人が受益の意思表示をする前にその効力を失ったこととなり,被上告人が本件債務引受条項に基づき上記過払金等返還債務を引き受けたということはできない。最高裁平成23年(受)第516号同年9月30日第二小法廷判決・裁判集民事237号655頁は,被上告人が,本件業務提携契約を前提としてその完全子会社の顧客に対し被上告人との間で金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結することを勧誘するに当たって,顧客と上記完全子会社との間に生じた債権を全て承継し,債務を全て引き受ける旨の意思表示をしたものと解するのが合理的であり,顧客も上記の債権債務を被上告人において全てそのまま承継し,又は引き受けることを前提に,上記勧誘に応ずる旨の意思表示をしたものと解される場合につき判断したものであり,上告人の意思を考慮することなくAと被上告人との間で本件譲渡がされたにすぎない本件とは,事案を異にすることが明らかである。
以上によれば,被上告人は,本件債権譲渡基本契約及びこれに基づく本件譲渡により,第1取引によって発生した過払金等返還債務を承継したとはいえない。また,前記事実関係によれば,被上告人において上記過払金等返還債務の承継を否定することが信義則に反するともいえない。

6 以上と同旨の原審の上記判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦 裁判官
小貫芳信)

 

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