最高裁昭和43年10月29日第三小法廷判決・ 民集第22巻10号2257頁
2016-12-02
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人板井一治名義の上告理由第一点について。
金銭を目的とする消費貸借上の債務者が、利息制限法所定の制限をこえる利息、損害金を任意に支払つたときは、右制限をこえる部分は強行法規である同法一条、四条の各一項によつて無効とされ、その部分の債務は存在しないのであるから、その部分に対する支払は弁済の効力を生じないものである。したがつて、本件のように数口の貸金債権が存在し、その弁済の充当の順序について当事者間に特約が存在する場合においては、右債務の存在しない制限超過部分に対する充当の合意は無意味で、その部分の合意は存在しないことになるから、右超過部分に対する弁済は、充当の特約の趣旨に従つて次順位に充当されるべき債務であつて有効に存在するものに充当されることになるものと解すべきである。右のような場合における充当の関係は、法律問題に属するから、これについて所論のように当事者から特別の申立ないし抗弁が提出されることを要するものではないと解するのが相当である。
本件において、原審は、当事者の主張に基づき、本件貸金債権を含む上告人の被上告人に対する三口の貸金債権の約定利息の利率はすべて利息制限法所定の制限をこえていること、被上告人から上告人に対する弁済金の支払はすべて任意になされたこと、上告人と被上告人との間には弁済の充当の順序について原判示の特約が存在すること、を確定したのであるから、被上告人の特別な主張をまつまでもなく、被上告人から支払われた弁済金については、右特約の趣旨に従つて、利息制限法所定の範囲内で、順次、利息、遅延損害金の弁済に充当されたうえ、その余は当該債務の元本に充当されたものとした原判決の判断は正当である。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第二点について。
弁論主義のもとにおいては、請求の当否を決するために必要な主要事実は、当事者の弁論にあらわれないかぎり、その事実を判決の基礎とすることは許されないけれども、当事者の弁論にあらわれた以上、その陳述がいずれの当事者によつてなされたかを問わないし、その事実が確定されれば、これに対する法律効果の判断は裁判所の職責に属するから、裁判所は、右事実を判決の基礎として斟酌することができるのである。
本件についてこれをみると、所論本件貸金債権以外の三口の債権の存在および上告人と被上告人との間の右債権についての弁済関係は上告人から主張されたものであるが、被上告人において本件貸金債権に対する弁済として支払つた旨を主張した原判示(20)および(21)の弁済金合計三二〇万円については、当事者間にこれを本件貸金債権の弁済に充当する旨の合意または当事者の一方からこれをどの債権の弁済に充当するかについての指定がなされたことの立証がないとされたのであるから、原審が、上告人から主張された別口の三個の債権の存否、弁済の充当に関する前示特約および被上告人の上告人に対する弁済金の支払関係のすべてを斟酌し本件貸金請求の当否を決したのは正当であつて、その判断の過程に所論の違法はない。
論旨は独自の見解に立つて原判決を非難するものであつて、採用することができない。
同第三点および上告人の上告理由について。
記録を調べても、所論のように、上告人が原審において本件各債権につき損害賠償額の予定の特約の存在を主張した形跡は認められない。論旨指摘の各準備書面の記載も右特約の存在を主張した趣旨に解することはできないし、所論のように、証拠上、右損害賠償額の予定の特約が存在することを窺わせるものが存在したからといつて直ちにその旨の主張があつたとすることはできず、右主張が存在しない以上、原審が右特約の存否について判断をしなかつたからといつて、所論判断遺脱の違法があるとはいえない。また、本件訴訟の経過に照らせば、原審が右特約の有無について釈明しなかつたからといつて釈明義務に違背した違法があるとはいえない。論旨はいずれも採用することができない。
上告代理人板井一治名義の上告理由第四点について。
金銭を目的とする消費貸借上の利息について利息制限法一条一項の利率の制限をこえる約定があるが、債務の不履行による賠償額の予定については約定がない場合においては、利息の額は右条項所定の制限額にまで減縮されるとともに、賠償額もおのずから右と同額にまで減縮され、その限度において支払を求めうるにとどまるものと解すべきことは、当裁判所昭和四〇年(オ)第九五九号、同四三年七月一七日大法廷判決の示すとおりであつて、これと同旨に出た原審の判断は正当である。
したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第五点について。
原判決の確定した事実関係のもとにおいては、上告人と被上告人とが連帯債務者となつて訴外E株式会社から借り受けた金六〇万円について、上告人が右六〇万円およびこれに対する日歩二〇銭の割合による約定利息を弁済したときは、上告人は被上告人に対し右元本六〇万円およびこれに対する借受けの日から弁済の日までの日歩二〇銭の割合による利息の償還をする旨の約定は、実質的には、上告人の責任で弁済することにより上告人と被上告人共同の免責をうべきものとされた借受元利金債務の存在を前提とし、連帯債務者間の内部関係において上告人がその全額を負担する旨の負担部分に関する約定にすぎないとする原審の判断は正当である。そして、金銭消費貸借上の利息の約定が利息制限法所定の制限利率をこえるときは、その超過部分に関しては右約定は無効であるから、上告人らは連帯債務者としてEに対しては右超過部分の利息債務を負担せず、したがつて、右超過部分に関しては被上告人には負担部分たるべきものも存在しなかつたものといわなければならない。
してみれば、上告人がEに対し前記利息制限法所定の制限を超過する利息金相当の金員を任意に支払つたからといつて、被上告人に対して右制限をこえる部分に相当する金員の求償を請求することは許されない筋合であつて、これと同旨に出た原判決の判断は正当である。
なお、上告人の弁済にかかる利息制限法一条所定の利率の制限をこえる部分の金員の支払が民法四四二条にいう「避クルコトヲ得サリシ費用其他ノ損害ノ賠償」にあたらないことはいうまでもない。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官横田正俊の意見、同田中二郎の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
上告理由第一点に対する裁判官横田正俊の意見は、次のとおりである。
金銭を目的とする消費貸借上の債務者が、利息制限法所定の制限をこえる利息、損害金を任意に支払つたときは、その弁済は効力を生じ、債権者は右超過部分を適法に保有することができるものと解すべきであるが(その理由については、当裁判所昭和三五年(オ)第一一五一号、同三九年一一月一八日大法廷判決における私の反対意見を引用する。)、原審が確定した事実関係によれば、本件における利息、損害金の支払は、債務者である被上告人と債権者である上告人との間の原判決認定のごとき特約に基づいてなされたというのであるから、被上告人が単に任意にしたものと認めるのは相当でない。そして、そのような場合には、利息、損害金の約定は利息制限法超過部分については無効であり、したがつて、前示特約のうち弁済金を右超過部分に充当する旨の部分も無効と解すべきであるから、右超過部分に対する本件弁済は、前示特約の趣旨にしたがつて有効に存在する他の債務に順次充当されるものと解すべきであるとする多数意見の結論に私も賛成である。また、上告理由第一点のその他の所論に対する多数意見もすべて正当であるから、私はこれに同調する。
上告理由第四点に対する裁判官田中二郎の反対意見は、左のとおりである。
多数意見は、「金銭を目的とする消費貸借上の利息について利息制限法一条一項の利率の制限をこえる約定があるが、債務の不履行による賠償額の予定については約定がない場合においては、利息の額は右条項所定の制限額にまで減縮されるとともに、賠償額もおのずから右と同額にまで減縮され、その限度において支払を求めうるにとどまるものと解すべきことは、当裁判所昭和四〇年(オ)第九五九号、同四三年七月一七日大法廷判決の示すとおりであつて、これと同旨に出た原審の判断は正当である」としている。
しかし、私は、この多数意見には賛成することができない。その理由は、次のとおりである。
民法四一九条一項は、「金銭ヲ目的トスル債務ノ不履行ニ付テハ其損害賠償ノ額ハ法定利率ニ依リテ之ヲ定ム但約定利率カ法定利率ニ超ユルトキハ約定利率ニ依ル」旨を定めている。これは、当事者間の約定は、利息制限法その他強行法規に反しないかぎり、できるだけ、これを尊重することが債権法の原則であるからである。
ところで、当事者が利息の約定をする場合には、弁済期前の利息と弁済期後の不履行による損害賠償に該当するいわゆる遅延利息とを区別して定めることもあるが、そのような区別をすることなく、約定利息を定めることも少なくない。このように、弁済期の前後を区別することなく、利息制限法一条一項の利率の制限を超える約定がされている場合に、直ちに、債務の不履行による賠償額の予定(遅延利息)については約定がないと断定することには、少なからず疑問が感ぜられる。弁済期後の賠償額の予定について特に明示的に約定がされていない場合であつても、当事者としては、利息制限法の許す範囲内で、その約定利率による遅延利息を授受しようとする意思であつたと解するのが相当であり(貸主としてはもちろん、借主としても、それをやむを得ないところとして承認しているものということができる。)、この当事者の意思を尊重することこそ、さきに述べたように、債権法の原則に合するゆえんではないかと考える。すなわち、金銭を目的とする消費貸借上の債務に対する弁済期後の遅延利息については、利息制限法四条の賠償額予定に関する制限の範囲内において、約定利率による損害金の請求をすることが許されるものと解すべきで
ある。
よつて、上告理由第四点は、理由があり、原判決は、この点において破棄を免れないと考える。
なお、さきに私が同調した右大法廷判決に対する奥野裁判官の反対意見参照。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 横 田 正 俊
裁判官 田 中 二 郎
裁判官 下 村 三 郎
裁判官 松 本 正 雄
裁判官 飯 村 義 美
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最高裁平成24年9月11日第三小法廷判決・ 民集第66巻9号3227頁
2016-11-30
主 文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告代理人前田陽司,同黒澤幸恵,同飯谷武士の上告受理申立て理由第2につい
て
1 本件は,被上告人が,貸金業者であるA株式会社及び同社を吸収合併した上告人との間の継続的な金銭消費貸借取引について,各弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の制限を超えて利息として支払われた部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金が発生していると主張して,上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金852万2896円の返還等を求める事案である。
被上告人は,Aとの間で,いわゆるリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約を締結し,この基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を行った後,不動産に根抵当権を設定した上で確定金額に係る金銭消費貸借契約を締結し,これに基づく借入金の一部により上記継続的な金銭消費貸借取引に係る約定利率による計算を前提とする元本及び利息の残債務(以下「約定残債務」という。)を弁済したところ,上記継続的な金銭消費貸借取引により発生した過払金を上記借入金債務に充当することができるかどうかが争われている。
2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 被上告人は,Aとの間で,融資限度額の範囲内で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した無担保の金銭消費貸借に係る基本契約(以下「本件第1契約」という。)を締結し,これに基づき,昭和63年3月10日から平成10年6月9日まで,第1審判決別紙計算書の「年月日」欄記載の日に「借入金額」欄又は「弁済額」欄記載のとおり,おおむね100万円以内の金額を10回にわたり借り入れ,月額2,3万円を,また,新たな借入れ前には数十万円のまとまった金額を,それぞれ弁済するという継続的な金銭消費貸借取引を行った。本件第1契約は,利息を当初年36%,後に年28.6%,遅延損害金を平成10年4月14日以降年39.98%とし,返済方法を毎月の返済日に融資残高に応じた一定額の金員を弁済するという元利定額残高スライドリボルビング方式としたものである。
(2) 被上告人は,Aの担当者から勧められて,平成10年6月16日,Aとの間で,本件第1契約に基づく借入金債務及び他の貸金業者に対する借入金債務を一括して弁済する目的で,被上告人の母を連帯保証人とし,母が所有する不動産に極度額を900万円とする根抵当権を設定した上,600万円を借り入れる旨の金銭消費貸借契約(以下「本件第2契約」という。)を締結した。本件第2契約は,利息を年18.5%,遅延損害金を年29.2%とし,返済方法を毎月11万0100円ずつ120回にわたって分割弁済するとしたものである。
Aは,同日時点における本件第1契約に基づく約定残債務の額を86万3123円と計算し,これを被上告人に告げ,同日,本件第2契約に基づく貸付金の一部を上記の約定残債務の弁済に充てて本件第1契約に基づく取引を終了させた上,残額513万6877円を被上告人に交付した。
被上告人は,A及び平成15年1月1日にAを吸収合併して貸主の地位を承継した上告人に対し,平成10年6月16日から平成20年11月25日まで,本件第2契約に基づく借入金債務につき,上記計算書の「年月日」欄記載の日に「弁済額」欄記載の各金員を弁済した。
(3) 本件第1契約に基づく取引に係る弁済につき,制限超過部分を元本に充当されたものとして計算をした残元金は,上記計算書の「残元金」欄記載のとおりであって,平成10年6月16日時点における過払金は,112万3907円となる。
上告人は,上記過払金に係る不当利得返還請求権については,本件第1契約に基づく取引が終了した平成10年6月16日から10年が経過し,消滅時効が完成していると主張して,これを援用した。
3 原審は,上記事実関係の下で,次のとおり判断して,本件第1契約に基づく取引により生じた過払金の返還請求権に係る消滅時効の成立を否定し,被上告人の請求を過払金702万0354円の返還等を求める限度で認容すべきものとした。本件第2契約は本件第1契約に基づく約定残債務の借換え及び借増しをしたものと認められ,当事者は,複数の権利関係が発生するような事態が生ずることを望まないのが通常であって,本件第1契約に基づく取引の清算と本件第2契約に基づく取引の開始とを同時かつ一体的に行うことにより債権債務関係を簡明にすることを意図していたというべきであるから,本件第1契約及び本件第2契約に基づく各取引は事実上1個の連続した貸付取引であると評価するのが相当であり,被上告人とAとの間には,本件第1契約に基づく取引により発生した過払金を本件第2契約に基づく借入金債務に充当する旨の合意が存在すると解される。
4 しかし,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)ア 同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は,第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されず(最高裁平成18年(受)第1187号同19年2月13日第三小法廷判決・民集61巻1号182頁,最高裁平成18年(受)第1887号同19年6月7日第一小法廷判決・民集61巻4号1537頁,最高裁平成18年(受)第2268号同20年1月18日第二小法廷判決・民集62巻1号28頁参照),第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができるときにおいては,上記の充当に関する合意が存在すると解するのが相当である(上記第二小法廷判決)。
イ 以上のことは,同一の貸主と借主との間で無担保のリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引が続けられた後,改めて不動産に担保権を設定した上で確定金額に係る金銭消費貸借契約が締結された場合であっても,異なるものではない。
(2)一般的には,無担保のリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約(以下「第1の契約」という。)は,融資限度額の範囲内で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることが予定されているのに対し,不動産に担保権を設定した上で締結される確定金額に係る金銭消費貸借契約(以下「第2の契約」という。)は,当該確定金額を貸し付け,これに対応して約定の返済日に約定の金額を分割弁済するものであるなど,第1の契約と第2の契約とは,弁済の在り方を含む契約形態や契約条件において大きく異なっている。したがって,上記イの場合において,第2の契約に基づく借入金の一部が第1の契約に基づく約定残債務の弁済に充てられ,借主にはその残額のみが現実に交付されたこと,第1の契約に基づく取引は長期にわたって継続しており,第2の契約が締結された時点では当事者間に他に債務を生じさせる契約がないことなどの事情が認められるときであっても,第1の契約に基づく取引が解消され第2の契約が締結されるに至る経緯,その後の取引の実情等の事情に照らし,当事者が第1の契約及び第2の契約に基づく各取引が事実上1個の連続した貸付取引であることを前提に取引をしていると認められる特段の事情がない限り,第1の契約に基づく取引と第2の契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価して,第1の契約に基づく取引により発生した過払金を第2の契約に基づく借入金債務に充当する旨の合意が存在すると解することは相当でない。
(3) これを本件についてみると,前記事実関係によれば,被上告人とAとの間では本件第1契約が締結され,これに基づく取引が続けられた後,改めて本件第2契約が締結されたところ,本件第1契約は無担保のリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約であるのに対し,本件第2契約は不動産に根抵当権を設定した上で1回に確定金額を貸し付け毎月元利金の均等額を分割弁済するという約定の金銭消費貸借契約であるから,両契約は契約形態や契約条件において大きく異なり,本件第2契約の締結時後は,本件第2契約に基づく借入金債務の弁済のみが続けられている。そうすると,本件第2契約がAの担当者に勧められて締結されたものであり,これに基づく借入金の一部が本件第1契約に基づく約定残債務の弁済に充てられ,被上告人にはその残額のみが現実に交付されたこと,本件第1契約に基づく取引は長期にわたって継続しており,本件第2契約が締結された時点では当事者間に他に債務を生じさせる契約がなかったことなどという程度の事情しか認められず,それ以上に当事者が本件第1契約及び本件第2契約に基づく各取引が事実上1個の連続した貸付取引であることを前提に取引をしているとみるべき事情のうかがわれない本件においては,本件第1契約に基づく取引と本件第2契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することは困難である。
したがって,被上告人とAとの間で,本件第1契約に基づく取引により発生した過払金を本件第2契約に基づく借入金債務に充当する旨の合意が存在すると解するのは相当でなく,上記過払金は上記借入金債務には充当されないというべきである。そうすると,上記過払金の返還請求権の消滅時効は成立していることとなる。
(4)以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな違法がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そこで,本件第2契約に基づく取引により発生した過払金の額等につき更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官田原睦夫の補足意見がある。
裁判官田原睦夫の補足意見は,次のとおりである。
無担保で融資限度額を定めたリボルビング方式による金銭消費貸借に係る基本契約(以下「リボ契約」という。)が締結された後に,担保権設定を伴う金銭消費貸借契約(以下「担保権付契約」という。)が締結された場合に,両契約に基づく各取引を事実上1個の連続した貸付取引と評価することができるか否かについて,下級審の裁判例が分かれているところから,両取引の関係の捉え方について,私の考えるところを以下に述べる。
1 当初のリボ契約の後に締結された担保権付契約が,同様にリボ契約である場合には,両契約間の基本的な相違は,担保権設定の有無の点だけであるから,両契約に基づく各取引を事実上1個の連続した貸付取引と評価することができるか否かは,法廷意見の引用する当審の判例に従って判断することに何ら問題はない。
2 問題となるのは,担保権付契約が,本件のように1回に確定金額を貸し付け,その返済方法は,約定の返済日に約定の金額を分割弁済する旨の契約である場合である。
かかる担保権付契約は,法廷意見が指摘するとおりリボ契約とは契約形態や契約条件が大きく異なるのであり,殊に契約により貸付けがなされた後に,継続的に新規の貸付けとその弁済が繰り返されることが予定されていないという点において,同契約関係をもって継続的取引とは解し得ないのであって,かかる取引とリボ契約に基づく継続的取引とを事実上1個の連続した貸付取引と評価することは相当でないというべきである。
3 もっとも,法廷意見にて指摘するとおり,従前のリボ契約が解消され,リボルビング方式によらない担保権付契約が締結された場合に,当該担保権付契約が締結されるに至る経緯やその契約内容,その後の取引の実情によっては両取引が事実上1個の連続した貸付取引と評価される場合があり得る。
例えば,担保権付契約による融資は確定金額による1回の融資ではあるが,一定額以上の元本の返済がなされれば,約定の返済日や返済金額に変更を加えることなく一定の限度額までの追加貸付けが予定されているような場合には,担保権付契約それ自体が継続的取引契約の要素を含んでいるところから,継続的取引契約たるリボ契約に係る取引と上記担保権付契約に係る取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価できる余地がある。また,貸主の合併等の理由により,同一貸主との間に複数のリボ契約やその他の金銭消費貸借契約を締結している場合や,同一貸主に対して夫婦や親子等経済的に一体の関係にある者が複数のリボ契約やその他の金銭消費貸借契約を締結している場合に,専らそれらの取引を一本化する趣旨で本件と同様の担保権付契約が締結されるなど,同一貸主に対する従来の自らの債務又評価されるときには,従前のリボ契約に係る取引と上記担保権付契約に係る取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価できる余地がある。
4 ところで,本件では担保権付契約によってなされた融資金額600万円のうち上告人に返済された金額は86万3123円で,融資総額の14.4%にすぎない。記録によれば,被上告人が本件担保権付契約を締結したのは,他の複数の消費者金融業者に対する借入れを一括して返済するためであることが窺えるが,被上告人がその当時負担していた他の金融業者の社名の一部は記録上明らかであるもののその全貌は明らかではなく,また,その借入金残高は記録上詳らかではない。しかし,記録からは,他の金融業者への返済以外の使途は窺えないのであって,上告人に返済した以外の残余の大部分は他の金融業者からの借入金債務の返済に充てられたものと推察される。そうすると,本件では,その借入金は,3で述べたような上告人からの複数の借入金債務を一本化するためになされたものではなく,主として他の金融業者からの借入金債務を返済して,借入金債務を上告人に一本化するためになされたことが窺えるのであって,その点からしても,両取引をもって事実上1個の連続した貸付取引と評価することは相当でないものというべきである。
なお,被上告人が借入金債務を返済した他の金融業者についても,何れも相当額の過払金が生じていたものと推認され,その合計額は,本件担保権付契約による借入金中,上告人に対する返済額の割合からして,上告人につき生じていた過払金の額の数倍になるのではないかと推察される。それらの金融業者は,上告人の貸付金によって利息制限法を超過する利息相当額も含めて全額の返済を受け,かつ,時効によりその過払金相当額の返済を求められる可能性がないのに対して,他の金融業者への返済資金を融資した上告人のみが,原判決のように本件担保権付契約による融資以前のリボ契約に係る取引と上記融資に係る取引とを事実上1個の連続した貸付取引と評価して,他の金融業者が時効により免責されている過払金部分について責任を負うべきであるとすることは,衡平の点からも問題が残るといわざるを得ない。
(裁判長裁判官 寺田逸郎 裁判官 田原睦夫 裁判官 岡部喜代子 裁判官大谷剛彦 裁判官 大橋正春)
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2016-11-28
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刑事事件・取調べを可視化のする緊急必要性
2016-11-26
テレ朝NEWS(2016/11/15 11:52)によると、
「奈良県警が逮捕した男性医師(当時54歳)が死亡したのは取り調べ中の警察官の暴行が原因だったとして法医学者が告発しました。
告発したのは、法医学者の出羽厚二岩手医科大学教授です。男性医師は2010年2月、奈良県大和郡山市の山本病院で、肝臓の手術ミスによって患者を死亡させた疑いで逮捕されました。告発状によりますと、取り調べにあたった警察官が頭部や胸部を殴るなどの暴行を加え、急性心不全などの多臓器不全で男性医師を死亡させたとしています。
男性医師の遺族:「亡くなった患者に対しては心苦しく思っている。きちんと本当のことが知りたい」
奈良県警は「特にコメントはない。告発状については中身を見たうえで検討する」としています。」
とのこと。
テレビの映像を見る限り、病死であることに疑問が生じます(明らかな暴行痕とみえる異変が身体上うかがえる)。
これを警察側は自傷行為あるいはころんでけがをしたなどと説明しましたが、まったく説得力がありません。
仮にですが、警察側が容疑者を袋叩きにして死なせた場合でも、同じような遺体状態になるのでしょう。
もしも、今回の警察の言い分が通るようであれば、警察はやりたい放題で(人権無視で)取調べが可能であり、どんな事件でも真相は「藪の中」となるでしょう・・・
これを防ぐには、取調べをすべて録画すれば必要十分です(今の時代、これを実行するに費用はさほど掛かりません)。それすら拒否するのであれば、警察権力に対し、距離を置いて警戒する必要があると思われます。
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ラブレター手渡しの罪で逮捕される どんだけの罪になるのでしょうね!?
2016-11-24
時事ドットコムニュース(2016/11/18-13:05)によると、
「女子中学生(12歳)のかばんに「大好きです」と書いた紙を入れ、待ち伏せしたなどとして、所轄巣鴨署は18日までに、ストーカー規制法違反の疑いで、アルバイト木田啓介容疑者(42歳)=東京都杉並区成田東=を逮捕した。容疑を認めているという。逮捕容疑は6月ごろ、電車内で中学1年の女子生徒のかばんに自分の連絡先などを書いた紙を入れたほか、8~11月ごろ、4回にわたり通学路の都内の駅や飲食店で待ち伏せしたなどの疑い。巣鴨署によると、紙には「大好きです。連絡先を教えてください」と記してあり、木田容疑者の名前や電話番号も書いてあった。」とのこと。
42歳男性が12歳女子に(仮に、いくら大人びていたとしたとしても)ラブレターを出すことにそれなりに「異常性」を感じざるを得ません。しかし、正直、逮捕までする必要があるの?という気はします。
もっとも、容疑者には、5年前に当時小学4年生男子を自宅に3日間泊め置いたとして未成年者誘拐の前科があるようです。
特殊事例的には、犯罪危険性がある程度明確だったのかもしれません・・・。
起訴されるのかどうかまだわかりませんね。
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博多駅前道路陥没事故~速やかな復旧工事
2016-11-22
11月8日早朝に福岡県の博多駅前(実は私の通勤路でもあります。)で大規模な陥没が発生した。幅50メートルほどの大通りが丸ごと消滅した!
原因が福岡市の地下鉄延伸工事に関係していることもあり、福岡市の対応は早かった。
福岡市長は、直接の被害者がゼロであったことは「博多の奇跡」であると不幸中の幸いであったことを、今後速やかな復旧(11/14中を目標として)を目指すことをマスコミに述べた。そして、福岡市は、実際にマスコミを通じて福岡市民・国民にその驚くべき復旧の速さを映像で示してみせた(実のところ日本の土木技術の高さからして驚くべき復旧の速さでもないと思うが)。また、ホームページを活用した広報も活発だった。
事故の原因がほぼ明らかに市側にあることもあって(争う余地がほぼなく、復旧が遅れるとそれだけ損害賠償額が嵩む。)、市の危機管理(ダメージコントロール)は、総体的にみて特に決断が早く、優れて見事だったと思う。
市長も、彼がマスコミ出身ということもあるだろうが、マスコミに対し官僚答弁のように杓子定規な応対ではなく、また陣頭指揮などの演出はそれほどあざとくなかった。危機管理者として見事だったと思う。
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なにがなんでも東電を救う?法的債務整理を回避することの是非
2016-11-19
2016/11/16の東京新聞によれば、経済産業省は16日、有識者による「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」の作業部会を開き、福島第1原発事故の損害賠償費用を工面するために、原発による電気の利用者が事故に備えた保険料として積み立てるはず(?)だった「過去分」があると称し、最大50年さかのぼって国民から広く徴収する案を検討したそうです。
これに対し、脱原発の超党派の国会議員らから「まずは株主や銀行に負担させるべきだ!!」と批判の意見が噴出したとのこと。
思うに、原発はクリーンで最も安価なエネルギーであると散々広告をうっていたのは電力会社だったはずです。そして、不慮の事故が起きた現状で、そのあと始末を突如国民の税金で賄うべきだというのでは、どう考えてもむしが良すぎます(安価とは電力会社にとってなにがなんでも負担を減らしますの意味?)。
個人の債務整理と同じく、破産、再生、会社更生のみちを検討するのが、オーソドックスな資本主義法制での破たん処理の原則です。大口債権者である大手銀行のために、法的整理を回避して、国民の税金でなんとか問題解決しようというのは、法的に見ても、倫理的に見ても、擁護できそうにありません。平たく言えば、会社債権者(会社従業員を含む)を保護して、第一義的には第三者である国民全員(これから生まれてくる国民を含みます。)に責任を負わせておかしくないの?ってことです。
唯一電力会社を倒産させて大手銀行に大きな損失を与えては、日本経済が回復不能の損害を受けてしまうから、そんなことはできないという理屈は成り立ちえますが、そうなる根拠は実はどこにもないのです。なぜなら、日本は、第2次世界大戦で回復不能な損害を受けた(戦前の最大組織である軍隊(特に陸軍)が崩壊しました。)ものの立ち直りましたが、それに比べれば今回の事故はまだまだ軽いともいえそうですから。
「モラル・ハザード」という言葉があります。本当につぶしたら日本(経済)が壊れてしまう、会社、組織がほんとにあるのでしょうか?
理屈抜きにある一会社を救うというのでは、社会倫理的に許さず、取り返しのつかない不道徳の種を社会にまく結果になると私は思います。
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NHKの受信契約義務、最高裁大法廷が初判断へ
2016-11-18
テレビを保有しているのに受信契約の締結を拒んだ男性に対し、NHKが受信料を請求できるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長(ジャーナリスト大谷昭宏氏の実弟です!))は、審理を大法廷に回付した。
大法廷に事件が回付されるのは、重要な法律判断、憲法判断が必要な場合など。
裁判所法
第十条 (大法廷及び小法廷の審判) 事件を大法廷又は小法廷のいずれで取り扱うかについては、最高裁判所の定めるところによる。但し、左の場合においては、小法廷では裁判をすることができない。
一 当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき。(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く。)
二 前号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるとき。
三 憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき。
最高裁判所裁判事務処理規則
第九条 事件は、まず小法廷で審理する。
左の場合には、小法廷の裁判長は、大法廷の裁判長にその旨を通知しなければならない。
一 裁判所法第十条第一号乃至第三号に該当する場合
二 その小法廷の裁判官の意見が二説に分れ、その説が各々同数の場合
三 大法廷で裁判することを相当と認めた場合
前項の通知があつたときは、大法廷で更に審理し、裁判をしなければならない。この場合において、大法廷では、前項各号にあたる点のみについて審理及び裁判をすることを妨げない。
前項後段の裁判があつた場合においては、小法廷でその他について審理及び裁判をする。
裁判所法第十条第一号に該当する場合において、意見が前にその法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとした大法廷の裁判と同じであるときは、第二項及び第三項の規定にかかわらず、小法廷で裁判をすることができる。
法令の解釈適用について、意見が大審院のした判決に反するときも、また前項と同様とする。
本件では放送法第64条1項の憲法判断がなされる見とおし
放送法
(受信契約及び受信料)
第六四条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。
2 協会は、あらかじめ、総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ、前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。
3 協会は、第一項の契約の条項については、あらかじめ、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
4 協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をする放送は、これを協会の放送とみなして前三項の規定を適用する。
争点は、放送法64条1項が合憲か? 合憲だとして受信契約がいつ成立するかである。
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東京一極集中 擁護の裏理由である現行の金融制度維持
2016-11-10
東京の地価が日本一高いことは常識です。
高い地価はより多くの不動産投資を呼び起こします。東京への不動産投資に対し日本の金融機関がお金を貸し多額の利息収入を得ています。つまり、日本の金融機関は主として東京(を中心とした都会)への不動産融資で成り立っています。
東京の人口が減ると不動産価格が下落します。担保としていた不動産価格の下落は金融機関の不良債権の増加を意味します。
しかし人口減少は改善されない見込みです。
この因果関係の循環が働き出すと不良債権の増加が日本の金融機関の破たんを招くことになります。
したがって、日本政府は、日本の金融機関の破たんを防ぐため、地方の人間を東京に集中させる政策を採らざるを得ないでしょう。
そうすると、日本の総人口が減少する中、さらなる過疎化で地方自治体を破壊し、人口を東京に集中する政策は、日本の金融制度の抜本的改革を行わない限り、強化されることはあって弱まることはないと考えられます。
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ベーシックインカム 不道徳な制度?
2016-11-04
今年6月5日、スイスで行われた国民投票では、ベーシックインカム(最低限所得保障)の導入が反対多数(約80%)で否決された。
しかし、予見可能性の高いセーフティーネットとしてベーシックインカム制度は相当に優れている。また、行政裁量を減らして効率を高めることができる(公務員の数を減らすことができる。)。現状の生活保護に比べて、受給することが恥ずかしくない再分配制度である。行政ミス・行政もれが起こりにくい公平な仕組みである。
そして、私が最もこの制度に賛成する理由は、少子高齢化社会の解消、個人消費喚起の起爆剤になりうることである。
現在、若者の多くは不安定な収入しかなく(現在及び将来予測の可処分所得の減少)、年金制度の見通しも暗く、贅沢品の購入はおろか、結婚して子供をつくることさえ躊躇してしまう経済環境にあると推測できる。
ベーシックインカム制度に反対する表向きの主な理由として、勤労意欲が失われること、財源がないことがあげられる。
しかし、資本主義社会は人間の欲望を刺激する社会であり、人間の欲望は無限大である。
だとすると、ベーシックインカムで最低所得(スイスの提案では、大人1人月7万円、子供はその1/4)を保障された人々は、安心して、より欲望を満たそうと高度の消費に必要な収入を得るため、通常労働するのではないだろうか(逆に働かない人間は現在以上に倫理的に軽蔑されるであろう。)。安心して結婚し子どもを育てるのではなかろうか。また、企業家精神に富む人は、より容易に新規事業を展開するのではなかろうか。
私は、おおむね上記の理由でベーシックインカム制度の導入に賛成である。
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