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最高裁平成24年(許)第15号平成25年4月26日第二小法廷決定(対武富士管財人)

2017-01-06

主 文
原決定を破棄し,原々決定を取り消す。
本件担保取消しの申立てを却下する。
手続の総費用は相手方の負担とする。

理 由
抗告代理人赤渕由紀彦,同秋山真悟の抗告理由について
1 本件は,更生会社である株式会社A(平成24年3月1日に商号をB株式会社に変更した。以下,この商号変更の前後を通じて「A」という。)の管財人である相手方が,Aが仮執行宣言付判決に対する控訴の提起に伴って立てた担保の取消しの申立てをした事案である。相手方は,Aの更生手続において,上記担保の被担保債権である損害賠償請求権につき更生債権又は更生担保権としての届出がされなかったため,更生計画認可の決定により,Aは同請求権につきその責任を免れるから,担保の事由が消滅したと主張している(以下,更生会社が更生債権又は更生担保権につきその責任を免れることを「失権」という。)。

2 記録によれば,本件の経緯等は次のとおりである。
(1) 抗告人は,平成21年9月30日,札幌地方裁判所小樽支部に対し,Aを被告として,不当利得返還請求訴訟(以下「本案訴訟」という。)を提起した。同支部は,平成22年2月19日,本案訴訟につき,抗告人の請求を全部認容する仮執行宣言付判決(以下「本案1審判決」という。)を言い渡した。
(2) Aは,平成22年3月8日,本案1審判決に対し控訴を提起するとともに,強制執行の停止の申立てをした。札幌地方裁判所小樽支部は,同年4月5日,Aに700万円の担保(以下「本件担保」という。)を立てさせて,本案訴訟の控訴審判決があるまで本案1審判決に基づく強制執行を停止する旨の決定をした。
(3) 東京地方裁判所は,平成22年10月31日,Aにつき更生手続開始の決定をし,相手方を管財人に選任した。
(4) 抗告人は,平成23年1月27日頃,Aの更生手続において,本案訴訟において請求していた不当利得返還請求権等959万0029円につき,更生債権として届出をし,同請求権に関しては会社更生法150条1項の規定により確定した。ところが,抗告人は,本件担保の被担保債権である損害賠償請求権(以下「本件賠償請求権」という。)については,更生債権としても,更生担保権としても,届出をしなかった。
(5) 東京地方裁判所は,平成23年10月31日,Aにつき更生計画認可の決定(以下「本件認可決定」という。)をした。これにより本件賠償請求権は失権した。

3 原審は,①会社更生法2条10項の文言上,本件賠償請求権が更生担保権に当たることは当然であるとした上で,②本件認可決定により本件賠償請求権が失権した以上は,担保の事由が消滅したというべきであるとして,本件担保取消しの申立てを認容すべきものと判断した。

4 しかしながら,原審の上記判断は,是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い,金銭を供託する方法により担保を立てさせて強制執行の停止がされた場合,債権者である被供託者は他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有するものとされている(民訴法405条2項,77条)。これは,被供託者が供託金につき還付請求権を有すること,すなわち,被供託者が,供託所に対し供託金の還付請求権を行使して,独占的,排他的に供託金の払渡しを受け,被担保債権につき優先的に弁済を受ける権利を有することを意味するものと解するのが相当であって,これをもって被供託者に特別の先取特権その他の会社更生法2条10項所定の担保権を付与したものと解することはできない。したがって,仮執行宣言付判決に対する上訴に伴い,金銭を供託する方法により担保を立てさせて強制執行の停止がされた後に,債務者につき更生手続開始の決定がされた場合,その被担保債権である損害賠償請求権は,更生担保権ではなく,更生債権に当たるというべきである。
(2) そして,民訴法が,仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止に当たって,債務者に担保として金銭を供託させることができるものとした上,当該担保につき債権者である被供託者に上記の優先的な権利を与えているのは,供託金を債務者の責任財産から切り離し,債務者の資力等に影響されることなく,被供託者が強制執行の停止によって被る損害の塡補を確実に得られるようにしたものであると解される。そうすると,被供託者の有する供託金の還付請求権が債務者の更生手続によって制約されると解することは,上記の趣旨に反し,被供託者の利益を損なうものであって,相当ではない。
したがって,仮執行宣言付判決に対する上訴に伴う強制執行の停止に当たって金銭を供託する方法により担保が立てられた場合,被供託者は,債務者につき更生計画認可の決定がされても,会社更生法203条2項にいう「更生会社と共に債務を負担する者に対して有する権利」として,供託金の還付請求権を行使することができると解するのが相当である。 このように解さなければ,仮に被供託者が被担保債権につき更生債権として届出をした場合であっても,上記被担保債権が更生計画認可の決定によって更生計画の定めに従い変更されるのに伴い,供託金の還付請求権もその影響を受けるものと解さざるを得ないが,この解釈は被供託者の利益を著しく損なうものであって,採り得ないというべきである。
(3) そして,債務者につき更生手続が開始された場合,被供託者は,更生手続外で債務者に対し被担保債権を行使することができなくなるが,管財人を被告として,被供託者が供託金の還付請求権を有することの確認を求める訴えを提起し,これを認容する確定判決の謄本を供託規則24条1項1号所定の書面として供託物払渡請求書に添付することによって,供託金の還付を受けることができると解される。このことは,被供託者が上記更生手続において被担保債権につき届出をせず,被担保債権が失権した場合であっても異なるものではない。
(4) したがって,本件認可決定により本件賠償請求権が失権したとしても,そのことから直ちに本件担保につき担保の事由が消滅したということはできない。

5 以上説示したところによれば,原審の前記判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原決定は破棄を免れない。そして,本件担保につき担保の事由が消滅したと認めるべき事情はうかがわれないから,相手方の本件担保取消しの申立てを認容した原々決定を取り消し,同申立てを却下することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 小貫芳信 裁判官 竹内行夫 裁判官 千葉勝美 裁判官 鬼丸かおる)

 

 

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