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最高裁平成23年7月8日第二小法廷判決・ 集民第237号159頁(マルフク⇒ディック(対CFJ))

2016-12-10

主 文
1 原判決中,「93万円及びこれに対する平成21年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員」を超える金員の支払請求に関する部分を破棄する。
2 前項の部分につき,本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理 由
上告代理人前田陽司,同黒澤幸恵,同二瓶ひろ子の上告受理申立て理由について

1 本件は,被上告人が,貸金業者である株式会社A及び同社からその資産を譲り受けた上告人との間の継続的な金銭消費貸借取引に係る各弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の制限を超えて利息として支払った部分を元本に充当すると過払金が発生していると主張して,上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,その返還等を求める事案である。

2 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 被上告人は,昭和63年8月19日,Aとの間で,金銭消費貸借に係る基本契約を締結し,以後,継続的に金銭の貸付けと弁済が繰り返される取引を行った。
(2) Aは,平成14年3月29日,上告人との間で,同年5月2日を契約の実行日(以下「クロージング日」という。)として,Aの消費者ローン事業に係る貸金債権等の資産(以下「譲渡対象資産」という。)を一括して上告人に売却する旨の契約(以下「本件譲渡契約」という。)を締結した。
(3)本件譲渡契約は,第1.3条において,上告人は,譲渡対象資産に含まれる契約に基づき生ずる義務のすべて(クロージング日後に発生し,かつ,クロージング日後に開始する期間に関するものに限る。)を承継する旨を,第1.4条において,上告人は,第1.3条に明記するものを除き,Aのいかなる義務又は債務も承継しない旨を定め,第1.4条(a)において,上告人の承継しない義務又は債務の例として,譲渡対象資産に含まれる貸金債権の発生原因たる金銭消費貸借契約上のAの義務又は債務(支払利息の返還請求権を含む。)を挙げる。
(4)被上告人は,上告人との間で,平成14年6月3日から平成20年10月27日まで,継続的に金銭の貸付けと弁済が繰り返される金銭消費貸借取引を行った。
(5) 被上告人は,被上告人とAとの間の金銭消費貸借取引に係る過払金返還債務(以下「本件債務」という。)は当該取引に係る貸金債権と表裏一体のものとして上告人に承継されると主張する。

3 原審は,上記事実関係の下で,本件債務の承継の有無につき,次のとおり判断し,被上告人の請求を認容すべきものとした。
(1)本件譲渡契約は営業譲渡契約であるから,特段の事情のない限り,Aの営業に関する債権のみならず,金銭消費貸借取引に係る契約上の地位も上告人に移転したというべきである。本件において,上記特段の事情は認められず,上告人はAから本件債務も承継したといえる。
(2)上告人は,本件譲渡契約には上告人において本件債務を承継しない旨の定めがあると主張する。しかし,被上告人とAとの間で締結された金銭消費貸借取引に係る基本契約は,過払金が発生した場合にはこれをその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)を含むもので,貸金債権と過払金返還債務は表裏一体として密接に関連する。この場合,原則として貸金債権と過払金返還債務を別個に処分することはできず,本件譲渡契約に上記定めがあることは,被上告人の地位を左右しない。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
貸金業者(以下「譲渡業者」という。)が貸金債権を一括して他の貸金業者(以下「譲受業者」という。)に譲渡する旨の合意をした場合において,譲渡業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんによるというべきであり,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主と譲渡業者との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が譲受業者に当然に移転する,あるいは,譲受業者が上記金銭消費貸借取引に係る過払金返還債務を上記譲渡の対象に含まれる貸金債権と一体のものとして当然に承継すると解することはできない(最高裁平成22年(受)第1238号,同年(オ)第1187号同23年3月22日第三小法廷判決・裁判集民事236号登載予定参照)。そして,このことは,借主と譲渡業者との間で締結された金銭消費貸借取引に係る基本契約が,過払金充当合意を含むものであったとしても異ならない。
前記事実関係によれば,本件譲渡契約において,上告人は本件債務を承継しない旨が明確に合意されているのであって,上告人は本件債務を承継せず,その支払義務を負わないというべきである。

5 以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな違法がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中,不服申立ての範囲である93万円及びこれに対する平成21年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を超える金員の支払請求に関する部分は破棄を免れない。そこで,更に審理を尽くさせるため,上記部分につき,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 須藤正彦 裁判官 古田佑紀 裁判官 竹内行夫 裁判官千葉勝美)

 

 

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